役職定年で「モチベーション低下」する50代
「週刊東洋経済」(2022年11月26日号)の特集は、「1億『総孤独』社会」。役職定年の50代を襲う孤独や、「女性活躍」の陰に埋もれる中高年女性の貧困など、すべての人に忍び寄る影に光を当てている。
1人で暮らす人の割合が4割に迫り、孤独死の4割は現役世代というデータを見ると、気が重くなるだろう。
人事ジャーナリストの溝上憲文氏が、50代の悩みについてレポートしている。定年後研究所の調査によると、役職定年によって、「モチベーション低下」「諦め」「寂しい・孤独」「喪失感」を感じる人が少なくない。
役職定年後は、グループ会社や取引先に転籍を余儀なくされるケースも多いが、転籍先企業も高齢社員を抱え、受け入れポストも少なくなっているという。
65歳ないし70歳まで働き続けるならば10~15年間通用するスキルを身に付ける必要がある、と指摘している。
ノンフィクションライターの飯島裕子氏は、中高年女性の貧困について報告している。コロナ禍による影響を最も受けたのは非正規で働く女性で、シングルマザーには現金給付も行われた。
一方、子どもがいない単身女性は支援の対象外で、その実態は見えないという。全世帯で最も貧困率が高いのは65歳以上の高齢単身女性だ。20~64歳で4人に1人が貧困、65歳以上では2人に1人が貧困という状態である。
就職氷河期世代が老後を迎える頃、未婚または配偶者と離別した女性の約半数(290万人)が生活保障レベル以下の生活を余儀なくされるデータがあると聞くと、その深刻さがわかる。
◆コロナ禍でさらに進む「友達離れ」
孤独なのは中高年だけではない。
相談相手は「お母さん」という若者が増えている、という記事に驚いた。若い「Z世代」は、同僚や友達への過度な気遣いによって疲弊し、相談相手は「お母さん」という人が多いそうだ。コロナ禍でさらに「友達離れ」が進んでいる。
一方で、子どもの代わりに親の面倒を見る家族代行業への相談の約6割が「親の面倒を見たくない」というものだという。相談者は40代、その親は70代というケースが最も多く、一人っ子の単身男性が目立つそうだ。
厳しいしつけや育児放棄、逆に干渉され過ぎたという理由で、親と距離を置きたいという。火葬場に家族が来ないこともあり、死後も「孤独」ということでは、なんともやりきれない。
内閣官房孤独・孤立対策担当室の有識者会議メンバーの石田光規・早稲田大学文化構想学部教授(社会学)は、「働き盛り世代にまで孤独感が広がる現実をどう受け止めたらいいか。真剣に考えるべき時だ」と警鐘を鳴らしている。