新会社&研究開発センターの両輪、官民一体で競争力強化...背景に「経済安全保障」
今回の動きの起点は2021年6月に経産省が策定した「半導体戦略」だ。
半導体産業テコ入れを「国家事業」と位置づけ、まず国内の生産基盤強化を打ち出した。その第1弾が、TSMCとソニーグループなどによる熊本工場建設で、最大4760億円の補助金を出すことを決めるなど、国内工場への投資の後押しに着手した。
経産省はラピダスへの700億円補助とともに、次世代半導体の研究開発組織として「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」を年内に設立し、産業技術総合研究所や東大、理化学研究所などが参画すると発表した。日米政府は、次世代半導体開発で2022年5月に「半導体協力基本原則」に合意しており、その日本側の拠点となるものだ。
「日本のアカデミアと産業界が一体となって、半導体関連産業の競争力強化につなげていきたい」(西村康稔経産相)というように、新しい会社と研究開発センターを両輪に、官民一体で、次世代半導体の国産化に向けて取り組む体制を整備するのが経産省のシナリオだ。
こうした動きの背景に「経済安全保障」というテーマがある。
先述の日米の「半導体協力基本原則」合意は、中国への先端技術の流失をストップするのが目的で、同志国・地域で半導体の供給網(サプライチェーン)の強化を目指すことで一致している。
7月に開かれた日米の外務・経済担当閣僚による「日米経済政策協議委員会」(経済版2プラス2)では、半導体に関する重要技術の育成と保護に向けた共同研究開発でも合意した。