空前のヒットともいえる、ヤクルト本社の乳酸菌飲料「ヤクルト1000」に続けとばかりに、「睡眠改善」の効果を打ち出した機能性表示食品の飲料が続々と発売されている。
日本人は世界的にも睡眠時間が短いとされており、市場は今後もますます拡大しそうな勢いだ。
森永乳業、日清ヨークから新商品 伊藤園では抹茶の継続摂取と睡眠との関係を共同研究
ヤクルト1000は「睡眠の質の価値を改善する」とうたい、2021年に全国販売された。1本に同社史上最高となる1000億個の生きた「乳酸菌シロタ株」が入っているといい、ストレスが緩和されたり、深い眠りなど睡眠の質を高める機能があるとしている。
発売直後から、「飲んだら眠りがよくなった」など評価する声がテレビやインターネットを介して広がり、人気は急騰。22年には1日約180万本も売れるようになり、「欲しくても買えない」という品薄状態が続いている。
ヤクルト本社は11月、宅配専用と量販店向けを合わせた販売計画を1日計250万本に引き上げ、増産態勢を整えるため千葉県に新工場を建設すると発表。その投資額は350億円に上る。
そんなヤクルト人気をにらみ、森永乳業は9月に新発売した睡眠サポートドリンクは、その名もズバリ、「睡眠改善」。
同社が21年9月に8900人を対象に行ったアンケート調査によれば、うち48%が睡眠に何らかの悩みを抱えていることが分かったといい、その悩みに応えようという狙いで開発した。「L-テアニン」という成分を配合し、起床時の疲労感を軽減するとアピールしている。
日清食品ホールディングス傘下の日清ヨークも22年9月、睡眠改善や疲労軽減の効果をうたった「ピルクル ミラクルケア」を発売した。
他方、伊藤園は8月、抹茶を継続的に摂取することで睡眠の質が向上する効果があることを共同研究で確認したと発表。抹茶を含む商品の機能性表示の取得につなげられる、とPRしている。
睡眠サポート食品の市場規模...22年は460億円と大幅増の見込み
睡眠改善をうたう飲料市場が沸いているのは、コロナ禍で外出自粛を余儀なくされたなか、「生活習慣などについて考える人が増え、気軽で効果の高いドリンクに関心が高まったため」(流通関係者)とされる。
もともと日本人は睡眠時間が短く、経済協力開発機構(OECD)の調査によれば、加盟28カ国中、日本は27位と2番目に睡眠時間が短かった。睡眠改善をうたう身近なドリンクは、日本人が長く抱えてきた健康問題にうまくはまったといえそうだ。
調査会社、富士経済によれば、ヤクルト1000のような「ストレス緩和」や「睡眠サポート」をコンセプトとした食品の市場規模は21年が推定400億円超。22年には460億円と大幅増が見込まれている。
今後も成長が期待され、メーカーの開発競争も加速しそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)