2022年11月11日、暗号資産(仮想通貨)市場に激震がもたらされた――。突如、仮想通貨取引所のFTXが破産申請を行ったと発表、そのニュースが駆け巡ったのだ。このとき、暗号資産市場はどうだったのか? 明治大学の城正人さんが、リポートしてくれた。あわせて、今回のFTXの破産はなぜ起きたのか、解説していく。
市場は総悲観。FTX破産のニュース(明治大学 城正人さん)
●市場の推移と私の動き
仮想通貨取引所のFTXが破産というニュースが配信された当初は、仮想通貨価格は暴落するどころかむしろ上昇していました。また、2022年11月8日夜の発表の10月の米消費者物価指数で、物価上昇にめどがついたという理由から、いったんは2万ドルを大きく超える局面も。
しかし、暗号通貨取引所のバイナンスによる買収見込みが薄いことが、次第に市場に知れ渡ると、次第に価格は下落。
個人的にも、当初はそれほど深刻な事態であるとは考えていなかったため、最近買い増したビットコインのみを売却、利益確定を行いました。
しかし、バイナンスの売却断念が明るみになるとともに、事態は深刻化。本格的な「仮想通貨の冬」への転換と考え、残していた分についても売却。「ニュースを聞いた時点で、念のためにもっと早く撤退することができたのでは」というのが正直なところ。
しかも、です。私もたかをくくって引き出していなかった資産がいまだFTXに眠っており、今後、返ってきたらいいなぁ、なんて悶々としています。
今回の事態は、数億単位の損失を出している投資家も少なくなく、その影響は2014年に発生した「Mt.GOX(マウントゴックス)」をはるかに上回るとも。
今後、仮想通貨の市場が復活を遂げた際にも、未来永劫語り継がれる大事件として取り扱われることになるでしょうから、「未来の生き証人」として、何が起きていたのか知っておきたいですよね。
それでは、FTXがなぜ破産に追い込まれたのか、わかりやすく解説していきます。
●FTXとは
FTXとは2019年に設立された新興の仮想通貨取引所ながら、高度な取引システムや取扱銘柄の豊富さから、当時世界第二位のシェアまでのしあがりました。
代表のSam(SBF/Samuel Bankman-Fried/サム・バンクマン=フリード)は常に、半袖Tシャツとハーフパンツ、といったラフな格好で親しまれてきました。
そして、その特徴的なアフロヘアーから、日本では親しみをこめ「アフロ」との異名が付けられるほどの人気者。
しかし、近年は仮想通貨への適切な規制を呼びかけ、米国民主党献金ランキング第2位となるほど、政治への影響力を強めていました(この行動は、政治力を高めるとともに他社の競争力を落とすためではないか、と考えられている)。
たった3年間、30歳という世界最年少の若さで、2兆円以上の資産を保有する億万長者へと成り上がったSBF氏。今回の騒動を経て、その資産は94%が減少したとも。捜査当局に追われる身となってしまいました。
●破産までの経緯
まずは破産までの流れを簡単に4つでまとめると。
1.Coindeskから「Alamedaリサーチの資産構成に疑念がある」とのリーク発表
2.バイナンスCEOのCZ(Changpeng Zhao/チャンポン・ジャオ)が保有するFTT(FTX発行の仮想通貨)を処分することを発表
3.取引所の倒産などのリスクを回避するため投資家が仮想通貨の引き出しを迫る
4.取り付け騒ぎに対応できず出金停止、1.2兆円の債務超過に陥り破産申請
例えるなら、まさに「銀行の取り付け騒ぎ」。
きっかけはアラメダリサーチ社が資産の3割分をFTTというFTXが発行母体となった仮想通貨を大量に所有していたことに遡ります。すでに価値が評価されているビットコインなどと比較して、FTXが発行するFTTは「無から生まれた架空の資産」と言わざるをえません。
その点をリスクに思ったバイナンスCEOのCZは、保有する5億ドル分のFTTを売却することを発表。その後、FTT価格は大幅な下落を開始。価格下落によって、資産としての評価額は大きく毀損され、債務超過となり破綻。
実際には政治力を高めるFTXを危機に思ったバイナンスが裏で糸を引いていたのではないかとの疑惑も噴出しています。
さて、ここまで大まかな流れを解説してきましたが、今後の仮想通貨市場、ひいては社会経済全体にはどのような影響を及ぼすのでしょうか。来週は、この点について分析していこうと考えます。(次週に続く)
●今週の取引
11/7 BTC売却 0.0001枚 3,104円(1枚あたりの価格は3,104,000円)
11/8 BTC売却 0.0001枚 2,983円(1枚あたりの価格は2,983,000円)
前週からの損益=マイナス123円
11月11日現在=1万283円
◆池田昇太のワンポイントアドバイス
この1週間はFTX騒動で持ちきりでしたね。バイナンスのFTX買収合意で一時期相場が戻りそうな様子が見られたものの結局合意できず、FTTは下落、FTXは破産となりました。
米CoinDeskのリークによると、FTXの資産はほとんどがFTT、もしくはそれを担保にした資金、そして仮想通貨・株式で占められ、ほとんど現金が無い状態だったようでした。そのため、「財務状況を実際よりも大きく見せていた」といった指摘もされています。
FTXの一件を受けて、仮想通貨市場は4年に一度のペースで、こうした大きな騒動が起きているように思えますね。2014年のマウントゴックス事件、2018年のコインチェック事件、そして今回のFTX破産......。
今回の騒動がどれほど尾を引くのか、そしてまた、「中央集権的な取引所から分散型取引所へ」という流れが強くなっていくのか、気になるところですね。
2021年に引き続き、出場します! 投資対象として仮想通貨に興味を持つも、その技術の持つポテンシャルに惹かれDapp開発に着手。投資家としてだけでなく、開発者としての視点からの投資戦略も立てていきます!
Twitter: https://twitter.com/dennoah_jo
※学業多忙につき、今週は取引をお休み(北海道大学 花野直樹さん)
前週からの損益=プラス・マイナスゼロ
11月11日現在=1万291円
北大金融研究会の所属。ふだんはテクニカル分析を使った株式の短期トレードをしています。やるからには1位をとれるよう、頑張ります!
※取引をお休み(東京大学 迫嵩明さん)
前週からの損益=プラス・マイナスゼロ
11月11日現在=1万円
学生投資連合USIC代表
高校3年生の時に株式投資のおもしろさに目覚める。日本株、米国株、仮想通貨投資を行う。長期的に伸びる市場でビジネスを展開している企業に長期投資することをモットーとしており、テンバガーを虎視眈々と狙っている。 金融を学ぶ「おもしろさ」、投資を始める「意義」を多くの人に知ってほしいと切に願う。
学生投資連合USIC:https://www.usic2008.org/
◆◆アドバイザーのプロフィール
フリーランスのWebディレクター。金融系メディアを対象に執筆やディレクター業務に従事。投資歴7年。FXと仮想通貨をメインにトレードしています。ファンダメンタル分析よりかはテクニカル分析を好む。最近はNFT(非代替性トークン)の詐欺事例、法的問題について関心あり。
大学対抗戦「暗号資産バトル」競技ルール
・元本は1万円。
・通貨の選定は自由。ただし、国内の事業者で買える暗号資産に限定。
・レバレッジはかけられません。
・20%を超えて下げた場合は、強制的に取引を停止(ロスカット)とする。
・元本割れは1回まで。2回、資産を失った場合は、その時点でリタイアとする。
・運用期間は6か月。最終週時点での資産増減額で順位を決める。
学生投資連合USIC
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/