顧客の声を聞いて、解決の道を探る
信頼の回復に向けて、顧客の声を聞くことから解決策を探った。
当時のサラ・カサノバCEOは、2015年47都道府県を回り、352人から話を聞いたという。そして、食品の安全と品質を向上するとともに、老朽化した店舗の改装を進めた。不採算の131店を閉鎖した。「もうこれ以上落ちることはないのだから、できることは何でもやっていこう」と開き直ることから、明るさが生まれたという。
「永遠に続くビジネスモデルなどない」「次の成長のヒントは、停滞や挫折の中にある」と振り返っている。
一橋大学名誉教授の米倉誠一郎さんの「この50年、成長を重ねてきたイノベーター」と題したインタビューも収められている。危機に際して、表層的な解決を求めなかった対応を評価。そして、「変わり続けてきたからこそ、変わらない価値を多くの人々に提供」してきたと見ている。
ここまでが第1部の「歴史編」で、第2部は「経営理念編」だ。「QSC&V」。つまり、「品質、サービス、清潔さ、価値」という企業理念や「ハンバーガー大学」による人材育成、クルー採用の半分以上は「友人紹介」であるワケなどを解説している。
また、サプライヤーのフジパン、森永乳業の社員の寄稿が載っているのも異色だ。フランチャイジーとサプライヤー、マクドナルド。この3者が支え合う「3本脚の椅子」という考え方がここにも表われていると思った。
同社では、「初の公式ビジネス書」と銘打っている。外食産業の関係者だけでなく、広くビジネスパーソンに勧めたい1冊だ。(渡辺淳悦)
「日本マクドナルド 『挑戦と変革』の経営」
日本マクドナルド株式会社著
東洋経済新報社
1760円(税込)