「物価高倒産」4か月連続最多更新! コロナ・人出不足で「経営体力」限界の中小企業...円安&ウクライナ危機、最後のトドメに

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   物価上昇が企業に最後のトドメを刺すかのような「物価高倒産」の勢いが止まらない。

   帝国データバンクが2022年11月9日に発表した「特別企画:『物価高倒産』動向調査(2022年10月)」で明らかになった。

   2022年10月「物価高倒産」は41件となり、調査を開始した2018年以降で4か月連続最多を更新した。年末にかけてさらに増える見込みだという。

   コロナ禍や人出不足などで経営体力が限界に達した中小・零細企業を中心に、物価高が最後の「追い討ち」となり、経営破綻に追い込まれるケースが急増している。

  • 物価高がトドメとなり…(写真はイメージ)
    物価高がトドメとなり…(写真はイメージ)
  • 物価高がトドメとなり…(写真はイメージ)

名物土産「大阪もん」に選ばれた老舗和洋菓子が...

   帝国データバンクの調査によると、2022年10月の物価高倒産は41件判明、月間最多だった9月(35件)をさらに上回り、4か月連続で月間最多を更新した【図表1参照】。

(図表1)物価高倒産、月別発生件数の推移(帝国データバンクの作成)
(図表1)物価高倒産、月別発生件数の推移(帝国データバンクの作成)

   10月には、今年最多となる6700品目の飲食料品が一斉に値上げされたほか、大手電力・ガス会社が利用料金を引き上げてエネルギーコストも上昇した。円安による急激な輸入コスト増も打撃を与えている。

   2022年1~10月に発生した226件を業種別にみると、物流コスト上昇を運賃に転嫁できずに苦しむ「運輸・通信業」(51件)が最も多く、全体の約23%を占めた。以下、人出不足が深刻な「建設業」(49件)、コロナ禍によって操業減に追い込まれた「製造業」(44件)などが続いた【図表2参照】。

(図表2)物価高倒産、業種別(2022年1~10月)(帝国データバンクの作成)
(図表2)物価高倒産、業種別(2022年1~10月)(帝国データバンクの作成)

   10月の主な倒産事例を見ると――。

   (1)(株)戎大黒本舗(大阪府)...1927年創業の老舗の和洋菓子製造業。主力の「粟おこし」は、大阪・難波の名物で大阪土産の定番品としての知名度を誇り、JR・私鉄の主要駅売店や空港売店、専門店などで販売してきた。2010年には「岩おこし」「浪速おこし」「粟おこし板箱」などと並び、大阪の特産品と認められる「大阪産(もん)名品」に選ばれたほどだ。

   しかし、新型コロナ拡大でインバウンド需要が消失すると、土産物需要が急減し、2021年5月期の年売上高は約3000万円と、コロナ禍以前の10分の1に。その後、行動制限が解除されて需要こそ盛り返したが、原材料や運送費などのコスト高を販売価格に転嫁できず、行き詰った。負債額は約3億369万円。

資材価格高騰に後継者難も加わった建築資材卸業が...

物価高の直撃を受ける運送業界(写真はイメージ)
物価高の直撃を受ける運送業界(写真はイメージ)

   (2)(株)キャリーエムロジスティクス(兵庫県)...2008年設立の貨物自動車運送業者。飲料、食料品を中心に、近畿圏で近中距離輸送を手がけていた。徐々に業容を拡大し、2018年9月期には年収入高約2億9100万円を計上していた。

   しかし、新型コロナの影響もあり、得意先からの受注が大きく減少。2021年9月期の年収入高は約1億7000万円にとどまり、厳しい資金繰りを強いられていた。金融機関から返済条件緩和の支援を受け、複数の営業所を閉鎖するなど経費削減に努めてきたが、燃料費の高騰などで先行きの見通しが立たなくなった。負債は約2億5000万円。

   (3)(株)タイセイ(東京都)...1983年設立の建築資材卸業。鋼材や金網、ステンレスなどの建築資材の卸業とともに、下請けを中心に防音壁や各種柵の取り付け工事も手がけていた。

   しかし、新型コロナの影響により工事の延期や中止の影響を受け、業績が悪化。金融機関に返済計画の見直しを行い、事業継続を模索していたが、代表が高齢で事業承継問題を抱えていたうえ、資材価格の高騰が加わり、行き詰った。負債は約7500万円。

年末にはさらに厳しくなりそうだ(写真はイメージ)
年末にはさらに厳しくなりそうだ(写真はイメージ)

   帝国データバンクではこう警告している。

「10月の全国企業倒産件数は594件と、低水準ながらも6か月連続で増加した。中小・零細企業の多くは、コロナ禍で経営体力を消耗した末に倒産に至ったケースが多く、なかでも足元の物価高は『最後の一押し』となる要因の1つとして存在感を高めている。
10月末に発表された政府の総合経済対策は歓迎される一方、足元の物価高に対して即効性があるかは不透明な部分がある。資金需要が例年高まり、かつ企業倒産が相次ぐ年末にかけて、物価高倒産はさらに増加していく可能性がある」

(福田和郎)

姉妹サイト