給付水準は「月額5万円台後半」維持を目安か
現状を整理しておくと、マクロ経済スライドの停止を繰り返した結果、現在の年金給付水準は想定よりも高止まりしており、現行制度のままでは今後の抑制幅が大きくならざるをえない。
厚労省は制度設計の前提として、現役世代の平均手取り収入に対するモデル世帯(会社員と専業主婦の夫婦)の年金額の割合(所得代替率)が50%を下回らないようにしている。
前回の財政検証(2019年)では、厚生年金の代替率は2047年に50.8%と、今より2割減るが50%は維持できる一方、国民年金は3割落ち込むとの数字になっている。
月額約6万5000円の国民年金が仮に4万円台に落ちるようなことになれば、生活が立ちゆかなくなる人が続出するのは明らかで、給付水準を一定レベルに維持すること、そして、そのために誰が、どのように負担するかが今回の制度見直しのポイントということになる。
厚労省は、給付水準について「月額5万円台後半」を維持するのを目安にしている。
そのための負担について、(1)国民年金の保険料を支払う期間の延長、(2)財政力の強い厚生年金と財政力の弱い国民年金との間の調整、(3)厚生年金などに加入する短時間労働者らの対象拡大――の三つの改革案を検討している。