円安の打撃は、遅く、ジワジワと表れる
こうした事態をエコノミストはどう見ているのだろうか。
ヤフーニュースのコメント欄では、日本総合研究所上席主任研究員の石川智久氏が
「輸入系の企業、内需系の企業はどうしても円安によるコスト増加の影響を受けてしまいます。また、コロナ拡大時の借り入れ増大などによる影響も出てきているとみられます。一方で、輸出企業は円安で増益をもたらしています。つまり、大幅な円安は輸出に強い大企業などには大きなメリットがある一方、内需系で体力のない企業には円安倒産という二極化をもたらしています」
と、中小企業は特に円安の打撃を受けやすいと指摘。そのうえで、
「円安のデメリットは輸入品の価格上昇という形で比較的早期に出てくる一方、メリットは工場の国内移転や為替差益の賃金への還元など、1年程度為替動向よりも遅れる傾向があることにも注意が必要です。当面は円安のデメリットが顕在化する局面であり、円安のメリットを感じられるのは今から半年から1年後であるとみられます」
と、長期的にみていくことの重要性を指摘した。
同欄では、時事通信社解説委員の窪園博俊記者が、
「外為市場では、このところ円安の動きが一服しています。(中略)円安一服の背景としては、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースが今後は鈍化するのではないか、との思惑から、米長期金利の上昇が一服したことも指摘されます。足元では、日米金利差の拡大観測はやや後退しており、目先は、やや円高に振れる余地があるかもしれません」
と、円安の加速が収まりつつあると指摘。しかし、
「もっとも、ファンダメンタルズに目を向けると、日本の貿易収支はなお大きな赤字を計上し、貿易決済に伴う円売りは根強いと言えます。また、米国の利上げペースが鈍化しても、金利差自体はかなり広いため、改めてドル買い・円売りが強まる恐れはあります。円安で打撃を受ける企業にはなお厳しい状況が続くと思われます」
と、今後も厳しい経済情勢が続くとした。(福田和郎)