ANAとJAL、業績急回復! だが、必ずしも楽観はできない「3つの理由」

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   ANAホールディングス(HD)と日本航空(JAL)の業績が急回復している。

   両社の2022年4~9月期決算は、本業のもうけを示す利益ベースで中間決算として3年ぶりに黒字転換を果たした。旅客需要の回復が寄与しており、23年3月期通期でも黒字の見通しを示している。

   ただ、足元で再び増え始めた新型コロナ感染者の動向のほか、円安や世界景気の行方などがどのように業績に影響するか、懸念材料も少なくなく、楽観はできない。

  • ANAホールディングスと日本航空の業績急回復に注目(写真はイメージ)
    ANAホールディングスと日本航空の業績急回復に注目(写真はイメージ)
  • ANAホールディングスと日本航空の業績急回復に注目(写真はイメージ)

23年3月期通期見通し、両社ともに最終黒字見込む

   ANAHDが2022年10月31日発表した4~9月期連結決算(国際会計基準)の売上高は前年同期比83%増の7907億円、本業のもうけを示す営業利益が314億円(前年同期は1160億円の赤字)、最終利益が195億円(同988億円の赤字)だった。

   同時に発表した23年3月期通期見通しは、売上高が前期比67%増の1兆7000億円、営業利益が650億円(前期は1731億円の赤字)、最終利益が400億円(同1436億円の赤字)と3年ぶりの黒字を見込む。従来予想と比べ、売上高が400億円、営業利益が150億円、最終利益は190億円の上方修正になる。

   JALの4~9月期連結決算(国際会計基準、11月1日発表)も、売上高にあたる売上収益が前年同期の2.1倍の6185億円、本業のもうけを示すEBIT(利払い・税引き前損益)が3億円の黒字(前年同期は1518億円の赤字)と3年ぶりに黒字転換。最終赤字は21億円と前年同期の1049億円から大きく好転した。

   23年3月期通期も売上収益が前期比2.1倍の1兆4040億円、EBITは800億円の黒字(前期は2394億円の赤字)、最終損益は450億円の黒字(同1775億円の赤字)と、通期では最終黒字を見込む。こちらも、従来予想から、売上収益は140億円引き上げ、EBITと最終利益は据え置いた。

訪日外国人の観光需要の回復...国際線の旅客収入が好調

   売上高の見通しをもう少し詳しく見てみよう。

   ANAHDは、日本発着のビジネス需要や訪日外国人の観光需要の回復により、国際線の旅客収入(ANAブランドのみ)を980億円上方修正した。一方、国内線の旅客収入は、新型コロナ第7波で7~9月期の伸びが鈍化したことなどを踏まえ、640億円下方修正した。

   貨物郵便収入は、半導体製造装置や完成車など高単価な商材を取り込み、260億円上振れするとみる。

   JALも、国際線の旅客収入400億円、貨物郵便収入300億円の上振れを見込む一方、国内線旅客収入は540億円下振れするとみる。

   両社とも、燃料高や円安の影響も警戒している。

   ANAHDは、原油価格の高騰や円安で燃油費は従来予想から300億円膨らむとしている。燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)に転嫁する結果、運賃上昇で日本人の海外旅行需要が鈍化することなどを懸念している。

   JALは、燃油高や円安が4~9月期のEBITを110億円押し下げたと説明。10月~23年3月期も同程度の影響を見込んでおり、通期のEBITや最終損益の予想据え置きにつながっている。

不安要素に...コロナ感染再拡大、景気の先行き不透明、「貨物」の変調

   ただ、不安要素も多い。

   まず、コロナ感染の再拡大だ。新たな変異株が登場し、欧米から日本にもじわじわと広がっており、11月9日の厚生労働省の専門家会議で、第7波と同等以上の第8波への懸念が示されている。

   政府は新たな行動制限は実施しない方針を示しているが、感染拡大が国内航空需要の下押し圧力になる恐れがあるほか、国際線の収入回復を遅らせる可能性もある。

   また、景気の先行きも不透明だ。米国の記録的インフレに対する連邦準備理事会(FRB)の連続利上げで景気減速懸念が強まっており、世界の景気後退(リセッション)となれば、旅客需要の回復基調に水を差す。

   さらに、もう一つの心配の材料が、好調だった「貨物」部門の変調だ。

   コロナの感染拡大によって、港湾荷役や貨物船の運航が滞るなど、国際的に物流が打撃を受けた。そのため、航空貨物にとっては、思わぬ「特需」を生み、ANAHD、JALも恩恵を受けてきた。だが、コロナ禍の鎮静化で海運が正常化に向かい、コンテナ船の料金はここにきて急落しており、航空貨物運賃にも下押し圧力がかかっている。

   燃油高や円安も、短期的には為替予約などでヘッジして影響を抑えているが、長期化すれば負担が増す。ウクライナ侵攻でロシア上空の飛行を避けている欧州路線は、迂回による航続距離の伸長を余儀なくされている。

   航空大手の業績が長いトンネルを抜けつつあるのは間違いないが、このまま一本調子で回復する保証はないといえそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)

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