不安要素に...コロナ感染再拡大、景気の先行き不透明、「貨物」の変調
ただ、不安要素も多い。
まず、コロナ感染の再拡大だ。新たな変異株が登場し、欧米から日本にもじわじわと広がっており、11月9日の厚生労働省の専門家会議で、第7波と同等以上の第8波への懸念が示されている。
政府は新たな行動制限は実施しない方針を示しているが、感染拡大が国内航空需要の下押し圧力になる恐れがあるほか、国際線の収入回復を遅らせる可能性もある。
また、景気の先行きも不透明だ。米国の記録的インフレに対する連邦準備理事会(FRB)の連続利上げで景気減速懸念が強まっており、世界の景気後退(リセッション)となれば、旅客需要の回復基調に水を差す。
さらに、もう一つの心配の材料が、好調だった「貨物」部門の変調だ。
コロナの感染拡大によって、港湾荷役や貨物船の運航が滞るなど、国際的に物流が打撃を受けた。そのため、航空貨物にとっては、思わぬ「特需」を生み、ANAHD、JALも恩恵を受けてきた。だが、コロナ禍の鎮静化で海運が正常化に向かい、コンテナ船の料金はここにきて急落しており、航空貨物運賃にも下押し圧力がかかっている。
燃油高や円安も、短期的には為替予約などでヘッジして影響を抑えているが、長期化すれば負担が増す。ウクライナ侵攻でロシア上空の飛行を避けている欧州路線は、迂回による航続距離の伸長を余儀なくされている。
航空大手の業績が長いトンネルを抜けつつあるのは間違いないが、このまま一本調子で回復する保証はないといえそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)