もし「家庭の制約」なければ...管理職希望する女性64%! 生の声は?...「なりたくないのではない!」「管理職の代償が子どもにかかるのは悲し過ぎる」

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   日本企業の女性の管理職登用が遅々として進まない。

   世界経済フォーラムが今年7月発表した「ジェンダーギャップ指数」によると、日本は146か国中116位だった。「もともと日本女性は管理職になりたくない人が多い」とする指摘も一部にあるが――。

   そうしたなか、「もし家庭の制約がなければ、管理職を希望する女性は64%もいる」とする調査結果を、働く主婦層の実情や本音を探る調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が2022年10月26日に発表した。

   女性たちのホンネが明らかにした「女性管理職を増やすポイント」とはいったい何か。

  • この子のために管理職になれない?(写真はイメージ)
    この子のために管理職になれない?(写真はイメージ)
  • この子のために管理職になれない?(写真はイメージ)

政府目標「女性管理職比率30%」超えの「50%」希望者が最多

   女性管理職の比率が伸び悩んでいる。政府は2003年に「社会のあらゆる分野で、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度となるよう期待する」との目標を掲げ、取り組みを進めてきた。

   ところが、19年後の「男女共同参画白書令和4年(2022年)版」によると、常用労働者100人以上の民間企業で課長級以上の女性比率は2021年で12.4%にとどまるありさまだ。このため、政府は2020年7月、女性管理職30%の目標を「2020年代の可能な限り早い時期に」と先送りしてしまった。

   今回、「しゅふJOB総研」がおこなった「女性管理職に関する意識調査」では、就労志向がある女性にまず「管理職として就業した経験があるか」を聞くと、「ある」が23.8%、「ない」が76.2%だった=図表1参照。「管理職」を「1名以上の部下がいるチームの責任者」としたが、それでも約4人に1人しかいなかったわけだ。

(図表1)管理職として就業した経験があるか(しゅふJOB総研の作成)
(図表1)管理職として就業した経験があるか(しゅふJOB総研の作成)

   次いで、「管理職になることを希望しているか」を聞くと、「希望する」(1.8%)と「条件によっては希望する」(24.7%)を合わせて、「希望する」意向が約4人に1人の26.5%だった=図表2参照

(図表2)管理職になることを希望しているか(しゅふJOB総研の作成)
(図表2)管理職になることを希望しているか(しゅふJOB総研の作成)

   ところで、政府は「女性管理職比率30%」の目標を掲げているが、「女性管理職比率は何%くらいが妥当だと思うか」聞くと、「50%程度」(29.7%)が最も多く、「わからない」(24.0%)、「40%程度」(16.4%)、「30%程度」(16.1%)と続いた=図表3参照

(図表3)妥当な女性管理職の比率は何%だと思うか(しゅふJOB総研の作成)
(図表3)妥当な女性管理職の比率は何%だと思うか(しゅふJOB総研の作成)

   政府目標の30%を超える「男女同数」を希望する意見が一番多かったわけだ。

「結婚出産しても仕事を続けやすい雰囲気を作る」希望多い

   それでは、どうすれば女性管理職を増やすことができるだろうか。

   複数回答可で聞くと、「結婚出産しても続けやすい雰囲気を作る」(77.0%)がダントツに多かった。次いで、「拘束時間ではなく、成果で給与を決める仕組みを導入する」(47.7%)、「在宅勤務が認められる業務を増やす」(38.6%)、「女性管理職の事例を増やす」(34.2%)、「女性にもっと責任ある仕事を任せる」(28.0%)と続いた=図表4参照

(図表4)女性管理職を増やすにはどうすればよいと思うか(しゅふJOB総研の作成)
(図表4)女性管理職を増やすにはどうすればよいと思うか(しゅふJOB総研の作成)

   家事・育児の負担が大きい女性が働きやすい環境、制度を整えることが重要なようだ。

   そこで、そこで、「もし結婚や出産をしても家庭の制約がなく、100%仕事のために時間を使うことができるとしたら、管理職になることを希望するか」と聞いてみた。すると、「管理職を希望する」(15.4%)と「条件によっては管理職を希望する」(49.0%)を合わせて、6割以上の64.4%の人が管理職を希望すると答えたのだった=図表5参照

(図表5)もし家庭の制約がなく、100%仕事に時間を使うことができれば管理職を希望するか(しゅふJOB総研の作成)
(図表5)もし家庭の制約がなく、100%仕事に時間を使うことができれば管理職を希望するか(しゅふJOB総研の作成)

「女性管理職が増えれば、女性が働く環境もっと良くなる」

   「家庭の制約」がなければ、多くの女性が管理職になりたいと願っていることがわかる。フリーコメントでも、こんな思いを打ち明ける意見が相次いだ。

「どうやって家庭と両立しているのかと、真っ先に考えてしまう。家庭以外を管理する余裕がある方は、それだけで本当に凄い。ただ、昔に比べると学校で女子がリーダーになる機会が増えているとは思う。女性が上に立つことや、働き続けることは普通のことだと、小さいころから意識を変えていけたら良いと思う」(40代:今は働いていない)
「管理職に就けば、その代償は子どもにかかることも考えてしまう。小学生高学年だから1人で夜まで留守番できるだろうという考えは悲し過ぎる。子どもの影響力を考えてくれる会社が増えれば、比率も高くなるでしょう」(50代:パート/アルバイト)
「優秀でやる気があり、実力がある女性ならどんどん管理職に抜擢すべき」(40代:フリー/自営業)
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女性管理職としてはつらつと働くためには?(写真はイメージ)
「管理職の拘束時間が長すぎます。子供がいる女性、時短勤務などでは管理職は認められないなど、未だにドヤ顔で言い放つ輩もおります」(40代:契約社員)
「既婚女性は、家庭の家事育児分担が上手くすすまないと、管理職を希望したくても出来ないので、男性の家庭での家事育児分担への意識改革も必要だと思う」(40代:パート/アルバイト)
「女性管理職が増えれば、女性が働く環境ももっと良くなると思う」(50代:今は働いていない)
「なりたい人が女性でもなれる仕組みが必要」(30代:派遣社員)
「『管理職=勤務時間が長い』を解消しないと、女性管理職は増えないと思います」(40代:フリー/自営業)

   切々と訴える声が相次いだ。

「女性にとって家庭の制約が、管理職希望の高いハードルに」

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女性管理職が多い会社ほど働きやすい環境といわれる(写真はイメージ)

   今回の調査結果について、「しゅふJOB総研」研究顧問の川上敬太郎さんはこうコメントしている。

「『もし結婚や出産をしても家庭の制約がなく、100%仕事のために時間を使うことができるとしたら、あなたは管理職になることを希望しますか』と質問したところ、実に64.4%が『希望する』と回答しました。(その条件がなければ)26.5%にとどまることを考えると、女性にとって家庭の制約が、管理職希望の大きな妨げになっていることは間違いありません」
「これまで、女性自身が管理職になるのを望んでいないことが、管理職比率が高まらない大きな原因の1つだと指摘されてきました。しかし、そもそも女性が管理職を望まないのは、家庭の制約を受けることが大きな要因になっているようです。本来は管理職への登用は実力で判断されるものであり性別は関係ありません。しかし、仕事と家庭の両立は女性が行うもの、という性別役割分業意識を改めない限り、実力云々の前に女性の管理職希望そのものが不公平な形で歪められてしまうのだと思います」

   調査は2022年9月16日~2022年9月23日、ビースタイル・スマートキャリアや求人サイト「しゅふJOB」に登録している就労志向のある女性596人にアンケートをした。

(福田和郎)

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