ロシアも「バイデンの魔法は終わった」と期待
各紙が懸念するのは、トランプ系議員が上下院に強い影響力を持ちかねないからだ。
11月10日(日本時間)現在、米連邦議会の上下院選に共和党から出馬し、トランプ前大統領の推薦を受けた候補のうち、8割超が当選を確実にしている。日本経済新聞によると、日本時間9日午後6時の段階で、上院選のトランプ氏推薦候補26人のうち16人が、下院選では同162人のうち139人がそれぞれ当選を確実にした。
トランプ氏は、大統領在任中に「米国第一」を掲げるあまり、現在ウクライナを軍事支援しているNATO(北大西洋条約機構)からの離脱を検討した人物だ。そのトランプ氏が11月15日、2024年の大統領選出馬を表明する見通しだ。
下院でトランプ系議員が大幅に増えた場合、大統領再選を目指すトランプ氏と連動して、ウクライナ支援をめぐり、バイデン政権に揺さぶりをかけてくる可能性がある。
東京新聞(11月10日付)「米中間選挙、下院で共和党多数派奪還の勢い トランプ前大統領の足音迫る、ウクライナ支援などに影響懸念」がこう伝える。
「民主党が下院で少数派となれば、重要法案を通せなくなる。ウクライナへの支援見直しにつながり、ロシアへの国際的な包囲網にも亀裂が生じかねない。『米国第一』を掲げるトランプ氏の影響力が強い共和党内では、内政を重視するべきだという意見が浮上しているからだ。
米議会は3回にわたって追加支援の法案を超党派で可決してきたが、下院の反対票は今年3月の3票から、5月には57票に増加。すべて共和党議員だった。(中略)米政府の支援は総額182億ドル(約2兆7000億円)にのぼり、国際支援を主導してきた。縮小すればウクライナの防衛に影響する。
ロシアによる侵攻を阻止できなければ、『世界中で武力による現状変更が横行する』(ブリンケン国務長官)という懸念が現実味を帯びる」
実際、ロシアも今回の中間選挙の結果に期待しているという。産経新聞(11月10日付)「米中間選挙 露、ウクライナ支援低下に期待」はこう書いている。
「米中間選挙の行方は、ウクライナ侵略を続けるロシアも注視している。財政規律を重視する共和党が躍進した場合、米国のウクライナ支援の規模や速度が低下する可能性があり、各地の戦線で劣勢に立つ露軍にとっては有利となるためだ。
『米中間選挙での民主党の失敗により、バイデン政権の魔法は終わる。ウクライナは米国からの支援を失うだろう』
ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ南部ヘルソン州の親露派勢力幹部、ストレモウソフ氏は11月9日、交流サイト(SNS)でそう指摘した。同州では現在、州都ヘルソンを巡る攻防が焦点化している。同氏は共和党が勝利してウクライナ軍の攻勢が弱まることに期待感を示した形だ」