電力卸のJパワーの株価が2022年11月1日の東京株式市場で一時、前日終値比222円(10.7%)高の2290円まで上昇した。
10月31日の取引終了後に発表した2023年3月期連結決算の業績予想を上方修正したことが好感され、買いを集めた。
修正の大きな要因は海外子会社の収益増だが、価格転嫁をしにくい国内電力大手と違って、電力卸価格は値上げしやすいことも好材料のようだ。
オーストラリア産石炭の販売収益増、米国火力発電所の利益拡大
上方修正の内容を確認しておこう。売上高は従来予想より3630億円多い1兆7940億円(前期比65.4%増)、営業利益は同520億円多い1620億円(前期比86.3%増)、経常利益は同550億円多い1550億円(前期比2.1倍)、最終利益は同410億円多い1080億円(前期比55.0%増)と大幅な増収増益で、最終利益は2期連続の最高益を見込む。
売上高、利益ともに、オーストラリアの炭鉱権益を持つ子会社の石炭の販売収益の増加が上方修正の要因の大半を占める。経常利益の場合、550億円の増加分のうち390億円にもなる。
これに次ぐ次に大きな要因は、90億円増額修正の米国火力発電所の利益拡大見通しだ。
一方、国内事業を運営するうえで課題となる円安や燃料価格高騰は、卸値の上昇でカバーすることで大きな減益要因になることを回避できていることも、投資家の好感を呼んでいる。
収益が拡大するのに、配当予想の据え置きは気になる
ここでJパワーという会社の概要をみてみよう。
もともとは1952年設立の「電源開発」。ちなみに、今も商号は「電源開発」で、「Jパワー」は「コミュニケーションネーム(愛称)」だ。当初から電源開発促進法に基づく国策会社で、全国的な電力不足を解消するため、大規模な水力発電所建設にあたるのが一番の任務だった。国内炭を燃料とする火力発電所も手がける。
オイルショックを経て、海外炭を燃料とする火力発電所を建設するなど、国内の電力需要をカバーしてきた。さらには、再生可能エネルギーや海外発電事業に注力するなど、徐々にその役割も変化。「官から民へ」を掲げる小泉政権のもと、2003年に電源開発促進法が廃止され、2004年には完全民営化して東証一部に上場した。
民営化から20年近くたち、再生可能エネルギーの開発にシフトしようとするJパワーには、かねてから投資家の関心が高まりつつあった。そのなかで、大幅な業績見通しの上方修正に、市場が歓迎したかっこうだ。
ただ、収益が拡大するのに、配当予想を据え置いた点を疑問視する向きもある。10%超の上昇の後、株価が伸び悩んでいる一因もこのあたりにあるようだ。
「市場の圧力を受けて2022年4~12月期連結決算を発表するころには、配当予想を上方修正するのではないか」(国内証券)と期待する見方もある。(ジャーナリスト 済田経夫)