上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、半導体関連の検査・測定装置の設計・製造・販売を主な事業とする「グローバルニッチなファブレスメーカー」のレーザーテックです。
レーザーテックは、1960年に設立。2004年に東証JASDAQに上場し、2012年には東証二部へ、2013年には東証一部(現・プライム市場)銘柄に指定を受けました。2021年12月には「日経500種平均株価」の構成銘柄に初選定されています。
営業利益率36%を誇る「ファブレス(工場を持たない)メーカー」
それではまず、レーザーテックの近年の業績の推移を見てみましょう。
レーザーテックの売上高はここ数期、急速な右肩上がりを続けています。2022年6月期には、4期前の4.2倍、およそ690億円増となる903億7800万円へと急増しています。
2022年6月期の営業利益も、4期前の5.7倍、およそ268億円増となる324億9200万円。2022年6月期の営業利益率も、前の期から1.1ポイント悪化したものの36.0%という高い利益率を誇っています。
なお、レーザーテックは、自社の機能を「開発/設計/試作/販売/サービス」に絞り、製品はメーカーや商社から仕入れたり、協力会社に組立・製造などを委託したりしている「ファブレス(工場を持たない)メーカー」です。
2023年6月期の連結業績予想は、売上高が前期比54.9%増の1400億円、営業利益が同29.3%増の420億円の増収増益を見込んでおり、引き続き急成長となるとのこと。営業利益率は前期比でやや悪化の30%となると予想されています。
2023年6月期の第1四半期決算は、売上高が前期比182.4%増の257億2300万円、営業利益が同321.3%増の85億800万円に。期末予想は修正していません。
主力の「半導体関連装置」、9割超の売上高を海外市場で
レーザーテックは光応用技術をコアに、半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)の検査装置を開発・販売しています。事業セグメントは「検査・測定装置の設計、製造、販売」の単一ですが、経営説明会資料には製品別売上構成として「半導体関連装置」「その他装置」「サービス」という区分が示されています。
2022年6月期の構成比は、半導体関連装置が全体の84%と大半を占める759億円、その他装置が19億円、サービスが124億円という構成になっています。
また、半導体関連装置の2022年6月期の「受注高」は前期比の約2.9倍となる3090億円(全体の94.8%)に急増。「受注残高」も3641億円(同98.6%)と大きく積みあがっています。
半導体関連装置の2022年6月期の「地域別売上高」は、米国が266億円で全体の35.0%を占め、次いで韓国の221億円(29.1%)、台湾の144億円(18.9%)と続き、日本は67億円で8.8%を占めるにとどまっています。つまりレーザーテックは、海外を主な市場とする日本メーカーというわけです。
主要顧客は、1位が台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングで176億円、2位が韓国サムスンエレクトロニクスで140億円、3位が米インテルで103億円です。
平均年齢40歳、平均年収1448万円
レーザーテックの従業員数は、ここ数期で急速に増えています。連結従業員数は2018年6月末の332人から、2022年6月末には662人とおよそ2倍となっています。増加の理由は「研究開発、装置立上げ及びサービス体制を強化するための採用 によるもの」とのことです。
単体従業員数は、2018年6月末の232人から、2022年6月末の374人へと1.6倍に。平均年齢はやや低くなり平均勤続年数も短くなっているので、若手社員の割合が増えていると見られます。
レーザーテックの平均年間給与(単体)は右肩上がりに伸びており、2022年6月期は1448万円あまりに。4期前の2018年6月期より335万円も増加。平均年齢が低下するなかでの平均年収上昇ということで、近年の好業績が待遇に反映されていることが分かります。
なお、東洋経済オンラインの平均年収「全国トップ500社」最新ランキング(2022年2月15日付)によると、レーザーテックは11位。10位の住友商事に次ぎ、12位の三井不動産(1273万円)や13位の三菱地所(1267万円)、15位の野村総合研究所(1225万円)を上回っています。
レーザーテックの採用サイトを見ると、技術開発職(電気・電子回路の設計、精密機構の設計、光学設計、システム設計、ソフトウェア開発、フィールドサービス、技術営業など)の新卒採用を20名程度行うほか、キャリア採用も行っています。転職サイトの求人によると、海外営業担当の予定年収は600~800万円で、年齢・経験を考慮のうえ決定。賞与は業績連動となっています。
株価は約10年間で、約100倍にまで高騰
レーザーテックは「グローバルニッチ戦略」を採っています。マーケットを世界に求め、大手が参入しにくいサイズのマーケットで、かつ、中小企業にはノウハウや技術の点で参入が困難なニッチマーケットに注力しています。
強みは、社員一人当たりの売上高が1億3469万円、同営業利益が4842万円という高付加価値の事業を展開している点。5G対応のスマートフォンをはじめとする通信機器のほか、クラウドサービスの拡がりによるデータセンター向け半導体の高水準の需要が続いており、今後も事業の成長が見込まれます。
レーザーテック株価の年間高値は、2013年は376円、2014年は362円と低迷を続けてきましたが、業績の伸びに伴って、2017年は1590円、2020年は1万2200円と上昇し、2022年1月4日には3万6090円と約10年間で約100倍にまで高騰。現在は2万円前後で推移しています。
(こたつ経営研究所)