定年後、本当に稼ぐべき額は月10万円?...「老後2000万円問題」どう乗り切る?

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定年後は「小さな仕事」で満足

   定年後は、仕事に向かう体力や気力が緩やかに低下し、それに応じて仕事の負荷も下がる。そして、多くの定年後の就業者は、このような「小さな仕事」に前向きな意義を見出すようになるという。

   なぜ、このようなことが起こるのか。

   坂本さんは50代で就労観が一変するからだ、と説明している。リクルートワークス研究所「シニアの就労実態調査」によると、仕事に対して意義を感じるかどうかは、50代を底にしたU字カーブを描くという。

   定年を前にして「高い収入や栄誉」を追い求め続けるキャリアからの転換を迫られ、「他者への貢献」「生活との調和」「体を動かすこと」などに価値を感じるようになるからだ。

   それを裏付けるように、定年を境に「仕事満足度」が急上昇しているのも興味深い。

   同研究所「全国就業実態パネル調査」によると、70歳の就業者の5人に3人が今の仕事に満足していると答えている。「定年後の仕事はとても魅力的なのである。ところが、多くの人はそれに気づかない」とも。

   本書の第2部では、7人へのインタビューを通して、「小さな仕事」に意義を見出して生き生きと働いているシニアを描いている。

   本書を読んでみて、30~40代の働き盛りの世代への教訓を評者が挙げるとしたら――。1つ目は、定年後のことはあまり心配しなくてもいいこと。2つ目は、キャリアのどこかの段階で、ポストオフに直面することを覚悟しておくことだ。

   多くの企業で中高年が急速に増えていくなかで、現場で顧客の最前線に立って成果を生み出すプレイヤーが不足し、管理だけを行う人材へのニーズが低下しているからだ。

   3つ目は、退職金制度の縮減・廃止が進む方向のなかで、自衛する必要があること。貯蓄のほか個人型確定拠出年金(iDeCo)などの利用も考えられる。

   ともあれ、働き続ければなんとかなりそうだ。そのためにも、健康が最も大切であることは言うまでもない。「老後2000万円問題」の答えがわかったような気がする。

(渡辺淳悦)

「ほんとうの定年後」
坂本貴志著
講談社現代新書
1012円(税込)

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