全国で空き家が増え続ける中、国土交通省は空き家問題の対策を強化するための有識者会議を2022年10月末、スタートした。
空き家の増加を抑えたり、利活用を進めたりするための方策を検討し、2023年1月をめどに、具体策をとりまとめる計画だ。ただ、人口が減少する中で、空き家が減る要素は少なく、効果的な対策が打ち出せるかどうかに注目が集まっている。
2015年の特措法で「強制撤去」仕組みできたが...条件や費用面で厳しさ
国交省によれば、日本全国の空き家は計849万戸に上り、このうち賃貸や売却が予定されていないものは349万戸という。
何年間も適切に管理されず、放置されたままの空き家は、各地で社会問題化している。倒壊の恐れがあったり、ネズミや虫が大量発生して衛生上の問題を起こしたり、犯罪の温床になったり――と近隣住民に悪影響を及ぼすケースは少なくない。
2015年に施行された空き家対策特別措置法では、倒壊などの恐れがある空き家を「特定空き家」として自治体が強制撤去できる仕組みが作られた。だが、条件は厳しく、撤去費用が回収できないケースが多いなど、抜本的対策になっているとは言いがたい。
こうした中、今後もさらに空き家の増加が見込まれるため、国交省は対策強化に乗り出すこととなった。NPO法人などの意見も積極的に取り入れたい意向だ。
テレワーク普及はチャンスだが、「空き家」増加スピードは圧倒的に速い
空き家の利活用に関しては、新型コロナウイルス禍の中で、多少の期待も出てきている。
背景には、テレワークの普及がある。その結果、これまで仕事の都合で都心に住んでいた人たちの一部が地方に移り住み、空き家を改装して住むケースが少しずつ出てきたのだ。
住宅問題に詳しいアナリストは「居住の選択地が広がったことで、物件の状態がいい空き家に関しては活用される可能性が少し高まってきた」と話す。あわせて、地方への移住者に自治体やNPO法人が空き家を紹介する活動も全国で広がっており、利活用が進む可能性はある。
ただ、前出のアナリストは「少子高齢化が進んでおり、空き家が増えていくスピードの方が圧倒的に速いだろう」とも指摘する。「若い世代の持ち家志向は依然として強い」と述べ、空き家が大きく減少する可能性は極めて小さいと見る。
別の専門家は「新築住宅の建設を規制する対策がなければ、空き家は増える一方だ」と警鐘を鳴らす。空き家を増やさない対策を打ったとしても、新たな住宅が際限なく建設されれば、空き家は減るどころか増えるだけだからだ。
専門家の間では「根本的な解決を図るには、住宅の総量を管理する政策こそ必要」との声は強い。だが、住宅の振興策は景気対策と密接に関係することから、国交省の空き家対策が総量管理まで踏み込めるかには疑問を持つ人が多い。(ジャーナリスト 済田経夫)