AIやロボットによって「労働者のいない資本主義」になったら?...思考実験の結果
後半ではいよいよ、AI時代の資本主義について論じている。そこで、「労働者のいない資本主義」の可能性を問うている。
稲場さんは、前著「AI時代の労働の哲学」で、「機械に仕事を奪われる」という危惧は歴史上、何度も浮上したが、それらの予測は基本的に外れたと指摘。そして、人工知能があくまで「道具」に留まるなら、従来の機械化と同様に、私たちの社会を根本的に変えることはない、と結論づけた。
本書ではさらに推し進めて、AIやそれを搭載したロボットによって、人間の単純労働だけでなく、「知的労働」までもがある程度代替されるような状況が出現したとき、私たちの社会はどう変化するのだろうか? という思考実験をしている。
「労働者のいない・資本家ばかりの資本主義」においては、階級としての労働者は存在せず、不動産所有者と資本家ばかりがいるとしよう。ごく少数の無産者には、ベーシック・インカムのような最低生活保障がある。
このとき、どんな問題が生じるのか?
このような社会では、激減した労働需要に合わせて、労働供給も減る。つまり、かなり人口が減少すると予測する。人口が減少すれば、社会の中の文化的多様性は減少し、イノベーションの量も減り、生産性の上昇率も低下する。あまり、望ましくない未来のようだ。