米中間選挙と中国経済減速が「世界経済の危機」
一方、世界経済に与える影響については、「11月8日に投開票される米国中間選挙の結果が大きく左右する」と警告するには、大和総研リサーチ本部理事の野間口毅氏だ。
野間口氏のリポート「内外経済とマーケットの注目点 FRBに対する『ピボット(政策転換)』期待は『仕切り直し』に」(11月4日付)によると、FRBに対する政策転換の期待が「仕切り直し」になったため、年内最後となる次回12月FOMCまで、米国金融市場は経済指標発表やFRB高官発言があるたびに、改めて一喜一憂する展開になりそうだ。
その際、注目されるイベントが、中間選挙となる。目下の情勢は、バイデン政権の与党・民主党が不利だ=図表2参照。野間口氏はこう指摘する。
「米政治サイト、リアル・クリア・ポリティクス(RCP)によると、11月3日時点でバイデン大統領の支持率は42.5%と、不支持率の54.9%を10%ポイント以上下回っている。(中略)下院では与党・民主党が多数派を失う可能性が高い」
「上院では民主党と野党・共和党が拮抗しており、南部ジョージア州や東部ペンシルバニア州など7つの接戦州の結果次第となる。バイデン政権は与党が上下両院で多数派を占める現状でも、与党内の造反で政策実現に苦労していることから、上院で多数派を失えば『ねじれ議会』となり、政策実現が一段と困難になる可能性に注意が必要となろう」
米国経済だけではない。中国経済も悪化の兆しが見えていると、野間口氏は指摘する。
10月の中国共産党大会で決まった最高指導部は「習近平派」が大半を占め、市場重視の改革派が軒並み引退する見通しとなった。すると、外国人投資家が自由に株を売買できる香港市場では中国株売りが急増、10月31日の香港ハンセン指数は約13年半ぶりの安値を付けた。
外国為替市場でも人民元が対ドルで約15年ぶりの安値を付けた=図表3参照。「中国売り」が始まったのだ。
一方、中国国家統計局が10月31日に発表した10月のPMI(購買担当者景気指数)では、製造業が好不況の分岐点となる50を下回り、非製造業も50割れとなった=再び図表3参照。
野間口氏は、
「目先の内外株式市場や外国為替市場では、中国の政治や経済の先行きに対する警戒感が続く可能性があろう」
「(日本経済も)中国経済の回復の鈍さに加えて、物価高の継続や賃金上昇の鈍さが経済再開の足かせとなる可能性に注意が必要だろう」
と警告している。
(福田和郎)