マネーが実物投資から貯蓄に逆流...米国は景気後退に陥る
また、日本経済新聞オンライン版(11月3日付)の「NYダウ3日続落、505ドル安 FRBの利上げ長期化を警戒」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(国際金融、マクロ経済学)も、パウエル発言に注目した。
「パウエル議長が『9月に示した最終利上げ水準よりも高くなること』や『いつ利上げ幅を減らすかよりも、どれだけ金利をさらに上げるのか、どれだけ長く金融引き締めを維持するかの方がずっと重要だ』と発言したことが大きく株式市場に影響した」
と、金融市場の動揺を説明。そのうえで、
「市場では最終金利水準を(それまでの5%から)最大5.75%へと上方修正し、利上げも来年にわたって続くとの見方に変更した。ただ今後のインフレ見通しやこれまでの利上げの影響がラグをともなってどれだけ需要を抑制し労働市場のタイト感を減らすかは分かりにくいため、しばらく利上げの方向性は分かりにくくなる。金融株式市場の変動は続く可能性がある」
と、FRBの利上げは長期化するとみている。
一方、ヤフーニュースのコメント欄では、ソニーフィナンシャルグループのシニアエコノミスト渡辺浩志氏が、インフレの急速な進行が米国経済のブレーキになっていることを、こう指摘した。
「FRBの急速な利上げを受け米国の住宅ローン金利(30年固定)は先週7%を超えました。それに耐えかね住宅投資は腰折れしています。
住宅投資は米国経済の中でも真っ先に悪化する部分であり、炭鉱のカナリアと呼ばれます。そもそも住宅市場はどこまでの金利上昇に耐えられるのか。その臨界点は住宅投資の期待リターンである家賃利回りと考えられます。現在は家賃利回り5.8%に対し、ローン金利は7.2%。住宅投資はコストがリターンを上回る逆ざやとなっており、腰折れするのも当然です」
「この考え方を一般化すれば、米国経済がどこまでの利上げに耐え得るのかが見えてきます。米国経済全体から得られる期待リターンは名目潜在成長率(4%)と考えられます。
一方、政策金利は投資のコスト。いまFRBは来年中に政策金利を5%前後まで引き上げようとしています。そうなればマネーは実物投資から貯蓄へと逆流し、米国は景気後退に陥ることになるでしょう」
FRBの狙いがインフレ抑制のためには景気後退も辞さない点にあることを説明した。