ヘンリー王子が「ビビっている」?! ベストセラー確実?の「生々しい」暴露本に、米メディア「見苦しい」(井津川倫子)

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   エリザベス女王の崩御を受けて発売が延期されていたヘンリー王子の「tell-all memoir」(暴露本)が、2023年1月10日に発売されることが発表されました。出版社のペンギン・ランダムハウスが「生々しい内容」だとお墨付きを与えたこともあり、発売前から論争が巻き起こっています。

   とりわけ話題になっているのが、「SPARE(スペア)」というタイトル。

   ウイリアム皇太子の「スペア的立場」だったことへのあてつけか、との憶測が広がっています。16か国語に翻訳されての世界同時発売。世界的ベストセラー作家の座を目前にしたヘンリー王子ですが、世の中そんなに甘くはないようです。

  • ヘンリー王子「暴露本」が話題に…なりそう(写真はイメージ)
    ヘンリー王子「暴露本」が話題に…なりそう(写真はイメージ)
  • ヘンリー王子「暴露本」が話題に…なりそう(写真はイメージ)

「理想の仲良し兄弟」のはずが、ずっと「スペア」が不満だった?

   報道によると、ヘンリー王子はペンギン・ランダムハウスと4冊の本を出版する契約を交わしていて、契約金は数十億円にのぼるとされています。第1冊目となる自叙伝は、当初2022年末の発売が予定されていましたが、エリザベス女王の崩御を受けて、ヘンリー王子が「大幅な修正」を希望したことから、「発売が遅れている」と話題になっていました。

   一時は「お蔵入り」のウワサも流れましたが、巨額の契約金を支払っている出版社が、そう簡単に「打ち出の小槌」を手放すわけはありません。さんざん引っ張って話題を集めたところで、衝撃的なタイトルと共に発売が発表されました。

Prince Harry's memoir is due in January. How explosive will it be?
explosive:議論が紛糾する、論争を巻き起こす
(ヘンリー王子の自叙伝が1月に発売される。どれだけ論争を巻き起こすだろうか?:米ニューヨークタイムズ紙)

   米高級紙ニューヨークタイムズは「explosive」(論争を巻き起こすだろう)と予測していますが、発売を前にすでに論争を通り越して「嵐」が吹き荒れています。とりわけ英国メディアの興奮ぶりが目立ちますが、「英王室への挑戦状だ」とセンセーショナルに受け止められているのが「SPARE(スペア)」というタイトルです。

   出所になっているのは、「The heir and the spare」(継承者と予備の人)という、昔から使われているフレーズ。王室や貴族階級では通常、長男が「The heir」として称号を継承しますが、万が一に備えて「the spare」(予備の人)の次男を産んでおく、とされてきたことをどうやら表しているそうです。

   家系を維持することが命綱である特権階級ならではの「考え方」ですが、「SPARE(スペア)」というタイトルから、ヘンリー王子が「兄のスペア」としての人生に不満を持っていたこと、王室への批判が赤裸々に語られていることが推測されるため、英王室メンバーは戦々恐々としている(英メディア)と報じられています。

   たしかに、次男であるヘンリー王子がずっと兄の「スペア」であったことは間違いありません。それでも多くの人が違和感を抱いてしまうのは、自由奔放な性格のヘンリー王子は、小さいころから「スペア」の立場を謳歌しているように見えたことではないでしょうか。

   二人はずっと仲良し兄弟で知られていました。やんちゃな弟の面倒を見るしっかり者のウイリアム王子と、「頼れる兄貴」を慕うヘンリー王子のほほえましいツーショットに、理想の兄弟像を投影していた人も多かったはずです。

   むしろ、故ダイアナ妃のいたましい事故死のあと、王室バッシングが高まるなかで、「The heir」(王位継承者)の重荷を背負って、必死で「理想の王子像」を具現化していたウイリアム王子の方に、同情が集まっていたくらいです。

   出版社はヘンリー王子の暴露本を「raw」(生々しい内容)だと「確約」しているとか。兄が大好きで、いつもべったりとそばを離れなかったヘンリー王子。生々しい出版ビジネスの餌食にならないことを願います。

ニューヨークタイムズ紙、「ヘンリー王子はビビっている!」

   報道によると、父チャールズ国王や兄のウイリアム皇太子には、「SPARE(スペア)」というタイトルは事前に報告がなかったそうです。ヘンリー王子の自叙伝が世に出ることで、王室との関係修復はさらに困難になると予想されていますが、ヘンリー王子は家族関係よりも高額の契約金と、ベストセラー作家としての栄光を選んだのでしょうか。

   そんななか、「世の中そんなに甘くない」と警笛を鳴らしているのが米高級紙ニューヨークタイムズです。

   ヘンリー王子とメーガン妃といえば、そのスキャンダルな内容で世界中を震撼とさせた2021年の米テレビインタビューを思い浮かべます。セレブインタビュアーのオプラ・ウィンフリーによる独占インタビューで、英王室での差別など爆弾発言を繰り替えしたメーガン妃とヘンリー王子。米国だけで1700万人が視聴したとされていますが、ニューヨークタイムズ紙は、「Much has changed since」(当時とは状況が違う)と断言しています。

   同紙は、エリザベス女王崩御の悲しみが広がっている中での暴露ネタは、読者に「unseemly」(見苦しい)と受け止められるだけだと批判。実際、ヘンリー王子自身が、暴露本がもたらす影響に「Prince Harry has gotten cold feet」(ビビッている、おじけづいている)という、関係者のコメントも伝えています。

   さらに、英国民が経済や政治の混乱に苦しんでいるタイミングでの暴露本発売は、国民の感情を逆なでしたり、王室不要論を掻き立てたりして、ヘンリー王子を致命的な状況に追い込むと指摘。それでも「truth-telling prince.(真実を語る王子)のイメージを守りたいヘンリー王子は、出版に踏み切ったとしています。

   416ページにわたる「暴露本」の全内容が判明するまで数週間。ヘンリー王子にとって吉と出るか凶と出るか、世論の動きに注目です。

   それでは、「今週のニュースな英語」「get cold feet」(ビビる、おじけづく)を使った表現を取り上げます。いざという時におじけづいてしまうといった時に使います。

She is getting cold feet before her wedding.
(彼女は結婚式の前になっておじけづいてきた)

I was going to try bungee jumping, but I got cold feet.
(バンジージャンプに挑戦しようとしたが、直前にビビッてしまった)

   これまで数多くの「セレブ自叙伝」を手掛けた専門家によると、友好な家族関係と名声の二つを手に入れるのは難しいとのこと。「tell-all」(すべてを語る)自叙伝の発売で、ヘンリー王子は何を手にするのでしょうか。リスキーな挑戦の幕開けです。

(井津川倫子)

kaisha_20170303104637.png
井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
姉妹サイト