営業活動の成功率高めるには?...最重要ポイントは「ヒアリング」、どこを意識して聞いたらよいか?(大関暁夫)

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   ここまでの一連のシリーズでは、オンライン営業におけるインサイドセールス(社内営業)のあり方を解説してきました。今回は、インサイドセールスによって、双方向のコミュニケーションに移行した売込先について、フィールドセールス(渉外営業)部隊がどのようなアプローチをするべきか、その基本を解説します。

  • 適切な顧客ヒアリングとは?(写真はイメージ)
    適切な顧客ヒアリングとは?(写真はイメージ)
  • 適切な顧客ヒアリングとは?(写真はイメージ)

「脈あり」でも、焦らず、セオリーどおりに

   営業活動ですぐに売りたくなるのは、ある種の「押し売り」であり、「愚の骨頂」であると、本連載の冒頭でも申し上げました。インサイドセールス部隊からバトンタッチされた営業活動であっても、営業はしっかりとステップを踏むべきなのです。

   セオリーとしての営業のステップは、「(1)予備調査」→「(2)カットイン」→「(3)ヒアリング」→「(4)セールス」→「(5)クロージング」です。

   インサイドセールスとフィールドセールスの分業体制の場合、「(1)予備調査」から「(2)カットイン」までをインサイドセールス部隊が担当することと思います。そして、これを受けて「脈あり」情報を受け取ったフィールドセールス担当は、すぐにでも「(4)セールス」に入りたくなりますが、そこはセオリーを守って、「(3)ヒアリング」のステップを踏む必要があるのです。

   基本はいかに相手が「脈あり」であろうとも、まずは「(3)ヒアリング」をしっかり実施することです。「ヒアリング」は営業の5ステップの中で、最も重要かつ難しいステップであり、このステップがうまくいくいきさえすれば、その先の「(4)セールス」→「(5)クロージング」で成約に至る確率は大きく高まります。「セールス」が的を射たものになるか否かは、「ヒアリング」ステップ次第なのです。

   営業ヒアリングにおける最重要ポイントは、「相手の正確なニーズの把握」です。

   すなわち、どの領域にどのようなニーズがあるのか。言い換えれば、相手の現在の「お困りごと」は何なのかを正確に聞き出すことなのです。それを聞き出したうえで、自社の製品やサービスがその「お困りごと」の解決のお役に立てるかどうかを判断し、お役に立てると結論に至って初めて「セールス」につなげることができるのです。

ヒアリングでは、「もう一つ」の3Cトライアングルを意識しよう

   営業ヒアリングの基本は、マーケティングの「3C」で構成します。

   3Cトライアングルが2つ描かれた下図をご覧ください。下の3Cトライアングルは、自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)で構成されています。3者の間に存在する「←→」は、「顧客が自社に何を求めているか」「競合は顧客に何を提案しているか」「自社と競合との間にはどのような違い(強み、弱み)があるか」を示しています。ところが、これをヒアリングの際に、直接顧客に聞いても、なかなか教えてくれるものではありません。

   そこで、実際のヒアリングポイントとしては、その上に位置している、もう一つの3Cトライアングルに注目します。

   この「3C」は、顧客を自社(Company)に置き換えた時に、顧客の顧客(Customer)、顧客の競合(Competitor)との間で構成されるトライアングルなのです。この3者の間の「←→」は、「顧客の顧客が顧客に何を求めているか」「顧客の競合は顧客の顧客に何を提案しているか」「顧客と顧客の競合との間にはどのような違い(強み、弱み)があるか」ということを意味します。

   そして、これこそが、営業ヒアリングにおける最大のヒアリングポイントになるのです。営業ヒアリングでは、自社の業務領域に絡めて、まずここを聞くことが大前提であり、その回答の中にこそ、真のニーズの存在を認識することができるのです。

   裏を返せば、このヒアリングポイントを尋ねても、ニーズらしきものが見えてこない時には、現状では自社に対するニーズが明確には存在していないという可能性が高いことになります。

   このようにインサイドセールス部隊が「脈あり」と判断した先であっても、ヒアリングで「今すぐ先」ではないと分かった場合、その場でその先を切り捨ててはいけません。「今すぐ先」ではないものの、「そのうち先」として別管理しつつ、一定の期間を置きながら、随時ヒアリングを実施しつつニーズが熟するのを待つこととなります。

   せっかくの「脈あり」先をこの段階で切り捨ててしまっては、先々の成約チャンスをみすみす逃してしまうことになるのです。

セールス、プレゼンの場に、決裁権者に同席してもらうには?

   営業ヒアリングでは「相手の正確なニーズの把握」と共に、もうひとつ重要なヒアリング要素があります。

   それは、自社が提案をするものに対する、概算の予算感と予算金額に応じた決裁権者が誰かということです。決裁権者を聞くのは、セールス、プレゼンテーションの場に決裁権者により近い職位の人を引っ張り出すことが目的です。

   プレゼンテーションをその場ではなく、報告や会議で間接的に聞くことになる人は、否定がちに提案を受け止める傾向が強くなります。ですから、決裁権者により近い人を引っ張り出すことで、決裁ライン上で否定的に提案を受け止める人を減らすという効果があるからです。

   もちろん、決裁権者本人を同席させることができればベストです。窓口の担当者だけでなく、上席やあるいはさらにその上席までもプレゼンの場に同席してもらうためには、自社サイドからも引っ張り出したい相手の職位に見合った、あるいは、それ以上の上司を同席させることがポイントです。

   相手の部長を引っ張り出したいのなら、「プレゼンの際に、弊社の担当役員がご挨拶を兼ねて同席いたしと申しておりまして、御社の部長様にご同席をお願いできれば幸いです」のというように、ヒアリングの段階で事前にお願いすることが肝要です。

   自社の上司を上手に使うことも、セールスでは重要なポイントの一つなのです。

(大関暁夫)

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大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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