「来客数が減ったことで、売上ノルマが達成できない」「販売員の将来性に不安を感じながらも仕事を続けている」と悩んでいる人はいないだろうか。
Instagramを活用することにより、売上アップと個人のステップアップを図ろうと、本書「会わなくても『指名』される トップ販売員のInstagram力」(大和書房)は、提案している。
「会わなくても『指名』される トップ販売員のInstagram力」(艸谷真由著)大和書房
著者の艸谷(くさたに)真由さんは、株式会社grams代表取締役。アパレル販売会社に入社後、わずか3カ月で全社ナンバーワンの月間個人売上を獲得し、トップ販売員に。退職後は、専業主婦を経てInstagramに特化した支援会社gramsを起業した。
現在は百貨店公式インスタアカウントのプロデュース・ディレクションをメインに、アパレルブランドや商業施設でのSNS研修などを手がける。著書に「『こだわり』が収入になる! インスタグラムの新しい発信メソッド」がある。
個人アカウントでお客様と直接つながる
いま多くのファッションインフルエンサーが、インスタにファッション投稿をしているが、販売員こそインスタを活用しない手はない、と説いている。
なぜなら、所属するブランドの商品を誰よりも身近で見てきて、そのブランドの商品知識がある分、説得力があるからだ。「販売員の意見を必要とする人が、インスタでは溢れている」という。
新型コロナウイルスによる外出自粛のときも、インスタの個人アカウントを持っていて、顧客とつながる手段があった販売員は、店舗が営業停止になった際も、休業の知らせをしたり、商品購入の代替案として自社ECを紹介したりと、フォローができたという。
いままでは店頭での売上しか個人評価につながらなかったブランドも、EC購入でも個人売上になる仕組みが整った。そのため、販売員にとってEC売上に貢献でき、さらには自身の評価へつながる好循環が生まれている、と個人アカウントを持つメリットを強調している。
インスタは、顧客と販売員がダイレクトにつながれる場所で、「あなたの発信する情報のファンとなってくれた人が集まる場所」と、艸谷さんは説明する。
そうはいっても、勤務時間中にやることはたくさんあり、インスタなんて発信している暇はない、と思う人も多いだろう。艸谷さん自身も、販売員時代は同じように考えていたという。それは勤務時間の中で「作業」と「知的労働」の区別がついていなかったからだ。そして、こう断言する。
「インスタは商品整理や掃除や在庫チェックなどの動的待機とは違い、来店を促す可能性を自ら生み出すことができる『知的労働』なので、目の前の仕事をこなすといった『作業』ではありません」
◆まず、インスタを毎日見ることから始める
自分のお客さんを増やそうと決意したら、インスタ発信を始める前にやることがある。まず、「インスタを毎日見ること」から始めてください、と書いている。自分が毎日見たいと思えるファッションアカウントを10アカウント以上探して、フォローするところからスタートする。
そのとき、「自分は何と検索して、このアカウントへたどりついたのか?」を考えるのがポイントだ。
たとえば、「ユニクロ新作買い物リスト」「やってみたかったコーデ」「おしゃれに見える色の組み合わせ」などのタブがあるだろう。それらの投稿コンテンツを1つひとつ紐解きながら、「自分のブランドで置き換えてみると」と考えて、研究ノートをつくることを勧めている。
週に一度まとめてつくるのがコツ
いよいよ実践だ。
「スタイリング写真」では日常をイメージさせる、撮影してくれる人がいないときの対処法、短時間でおしゃれに仕上がる「文字入れ加工」など、具体的にアドバイスしている。
気になるのが更新の頻度だ。
「理想の更新頻度は1日1投稿。週に一度、7投稿分の企画を考えて、その企画に沿ったスタイリングで写真を撮り、その後、インスタの『下書き機能』を使って、投稿の準備をしておけば、1日で7日分の投稿が用意できる」と説明している。
数ある販売員のアカウントの中で選んでもらうには、セルフブランディングが必要だという。アカウントのコンセプトは「あなたらしさ」で決まる。
たとえば、身長、体型、自分の身体のポイントとコンプレックス、何色系の服を着ることが多いか、などの情報を整理する。ちなみに、コンプレックスこそが最強のコンテンツになるという。
「同じ悩みを抱えるお客様たちの『こんなに似合う服に出合えて嬉しい!』を探すお手伝いをインスタですることで、共感者に出会えます」
それから、ハッシュタグには、所属ブランドの関連ハッシュタグ、施設のハッシュタグとタグ付け、勤務地エリア、買い替えアイテムを仕込むのがコツだ。そして、これまで磨いてきた接客トークを「投稿文」で伝える。
販売員として一番大事なことは、生まれ持ったビジュアルではなく、軽快な接客トークでもなく、接客の際の「あなたの着こなし」だという。「お客様にいい服をオススメするために、自分もいい服を着る」と心構えについて語っている。
本書はアパレルを舞台にインスタグラムの活用を説いたものだが、飲食店や美容店など、さまざまな業界で使えるヒントに満ちていると思った。
(渡辺淳悦)
「会わなくても『指名』される トップ販売員のInstagram力」
艸谷真由著
大和書房
1760円(税込)