バイオ医薬品でも強い米国
「週刊エコノミスト」(2022年11月8日号)の特集は、「これから来る! バイオ医薬株」。コロナが一巡して治験や治療が再開し、これから期待が高まる有望な新薬とバイオ医薬株を総まとめしている。
コロナワクチンで有名になったメッセンジャーRNAを用いた医薬品開発技術は、ワクチン以外にもがん治療や遺伝子治療など多様な分野に応用が見込まれている。
国内でも独自技術でゲームチェンジャーを狙うベンチャー企業が多くある。明治大発ベンチャー「ポル・メド・テック」もその1つ。遺伝子改変した医療用ブタの心臓をヒトに移植することを目指している。
新型コロナウイルスの治療薬・ワクチン開発で、日本は大きく出遅れた。ようやく国産の飲み薬が承認されそうだという。塩野義製薬は9月28日、開発中の飲み薬「ゾコーバ」について、最終段階の第3相治験で軽症・中等症患者の病状改善を早める効果を確認したとの速報結果を発表した。一方、国産ワクチンの登場にはまだ時間がかかりそうだ。
アルツハイマー新薬としてエーザイが米バイオジェンと開発した「レカネマブ」が有望薬として登場しそうだが、適用は軽症者や発症前患者に限られるなど、壁も立ちはだかっているようだ。
そして、米国のバイオ最前線について、大和証券アメリカ医薬品・医療機器アナリストの中桐成美氏が分析している。市場規模の大きい未開拓領域を目指し、肥満症治療薬に大手の参入が見込まれるという。
肥満症患者は世界に約6.5億人存在するが、治療を受けている患者はほんの一部だ。デンマークの製薬大手ノボノルディスクの肥満症治療用の注射薬「ウェゴビー」が、2021年米国で承認され、発売から1年で四半期の売上は12億ドルとなった。
これは、1年分に置き換えると、一気に世界の医薬品売上ランキングの20番目(新型コロナウイルス感染症関連を除く)となり、同社の株価は1.3倍に拡大した。各社が肥満症治療薬に参入しそうだという。
このほか、ビオンテック、アステラス製薬、モデルナなどバイオ医薬品株15銘柄について予想。米国企業が圧倒的な存在感を示している。
大阪大学大学院工学研究科の大政健史教授は「バイオ医薬品の研究開発・製造には複雑で高度な知識が求められる。日本でも人材育成が急務だ」と指摘している。
(渡辺淳悦)