製紙大手、大王製紙の株価が、前日と同額だった日を挟んで2022年10月28日まで5営業日連続で終値の値を下げ、約6年2か月ぶりの安値となった。
ここへきて新たな材料が出ているわけではないが、足元の資材価格の高騰と円安の進行、9月に起きたボイラー事故などが投資家心理を悪化させているようだ。
通期の最終損益予想、下方修正...11期ぶり赤字の見通し
大王製紙の業況を確認しておこう。2022年9月中間連結決算は11月11日に発表を予定しているので、8月の4~6月期連結決算発表時に同時公表した通期業績予想の修正を振り返る。
売上高は従来比100億円増の6600億円(前期比7.8%増)だが、営業利益、経常利益、最終利益はともに下方修正した。
営業利益は従来比220億円少ない30億円(前期比92.0%減)、経常利益は従来比205億円少ない5億円(前期比98.7%減)、最終損益は従来予想の100億円の黒字から40億円の赤字(前期は237億円の黒字)へといずれも大幅に悪化し、最終損益は11期ぶりの赤字に陥る見通しとなる。
背景には、ウクライナ情勢の悪化による石炭や重油などの世界的な資源価格の高騰に加え、円安による木材チップ、パルプ等の輸入原料の購入価格の上昇が期初の想定を超えていることが挙げられる。
為替レートは8月の業績見通し修正時より円安が進んでおり、原燃料のさらなるコストアップの可能性が高まっている。このあたりが、大王製紙の株価の下落傾向に拍車をかけている。
一方、9月6日に福島県いわき市の工場でボイラー爆発事故が発生、1人が軽いやけどを負い、「4号ボイラー」が全損した。事故による損失の程度も注目されている。
証券会社レポート、投資判断格下げ...だが、秘める成長力に期待
こうした中、証券会社の見方は厳しくなっている。
大和証券は9月5日配信のリポートで、投資判断を5段階の最上位「1」から上から2番目の「2」に格下げ。9月9日にはJPモルガン証券が、3段階の最上位から最下位に一気に2段階も落とした。
もっとも、製紙各社の中で大王製紙は、なお成長力を秘めているとも見られている。
ペーパーレス化の逆風のもと、トイレットペーパーやティッシュペーパー、紙おむつといった需要が落ちない衛生用紙で、国内首位を誇るからだ。大和証券は格下げしたリポートでも「コスト競争力の高まり次第で再評価は可能とみる」と指摘した。
ちなみに大王製紙は、カジノでの使い込みで失脚した創業一族で元会長の井川意高氏らと経営陣のゴタゴタの後、同業の北越コーポレーションが創業家から保有株を買い取って2割超の筆頭株主となる状態が続いている。
北越側は当初、王子ホールディングス、日本製紙に次ぐ「第3極」を目指したが、北越より規模の大きい大王側の独立意識の強さもあって、再編問題に進展はない。(ジャーナリスト 済田経夫)