始めたら止めにくい電気・ガス代補助は、ポピュリスト政策
こうしてまとまった政府の総合経済対策をエコノミストはどうみているのか。
日本経済新聞オンライン版(10月28日付)「政府、総合経済対策を閣議決定 事業規模71.6兆円」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」で、政策研究大学院大学の竹中治堅教授(比較政治、国際政治経済)は、
「対策は首相が新しい資本主義で重視する科学技術開発、経済安保に真摯に取り組む覚悟があるのか疑問を感じさせる。最大の問題は開始後、撤回しにくい電気・ガス料金補助金である。ポピュリスト政策と言える」
との見方。そのうえで、その電気・ガス料金補助金について、
「1年間で3.9兆円必要になる。既に政権はガソリン補助金で3兆円以上費消している。(中略)首相は物価高騰が支持率や地方統一選挙に及ぼす影響が不安で仕方がないのだろう。だが、『広く薄く』で大きな効果は期待できない。財政赤字を増やすばかりである。巨額の財政資金を投じるなら科学技術開発や防衛体制拡充に充てる基金を設置したほうが遥かに我が国の将来に役立つはずだ」
と提案した。
日本経済新聞社上級論説委員・編集委員の菅野幹雄記者も、
「英国で財源なし、大盤振る舞いの巨額経済対策が市場に酷評され、首相の首が飛んだのをよそに繰り広げられた茶番劇です。弱者の立場にある人たちに手を差し伸べるのは、政治の責務です。しかし、景気も回復している中、富裕層にも電気代やガソリン代を補助する29兆円という額にどんな根拠があるのでしょうか」
と疑問を投げかけた。そして、
「英国同様の混乱が起きた時に、どんな責任を負うのでしょうか?」「いや、日本は違う? 確かに。でも、日銀が汗だくで国債を買ってしのいでいるだけですが。財政規律も大事という岸田首相が大盤振る舞いを黙認した罪は重い」
と厳しく糾弾した。