観光需要喚起策の「全国旅行支援」&入国者の「水際対策緩和」、3社に1社がプラスの影響と歓迎...課題は、人出不足のチャンス損失、コロナ拡大の不安

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   国内観光を促進して景気回復に結びつけようとする「全国旅行支援」と「水際対策の緩和」が2022年10月11日からスタートした。

   旅行関連や飲食業界を中心に期待が高まっているが、帝国データバンクが10月20日に発表した「緊急調査:全国旅行支援と水際対策緩和に関する企業の影響アンケート」によると、3社に1社が「プラスの影響を受けている」と歓迎している。

   その一方で、「急な需要増に対して人出不足で対応できない」「新型コロナ対策が心配だ」といった課題も浮かび上がった。

  • ニッポン観光のメッカ・浅草も活気づいている(写真はイメージ)
    ニッポン観光のメッカ・浅草も活気づいている(写真はイメージ)
  • ニッポン観光のメッカ・浅草も活気づいている(写真はイメージ)

「人手不足でお客への100%対応ができないのが悩み」

   帝国データバンクの調査によると、観光需要喚起策である「全国旅行支援」が、自社の企業活動へどのような影響(直接・間接を問わず見込みを含む)があるか聞くと、「プラスの影響」があると答えた企業は34.3%で、3社に1社の割合となった。「影響はない」は54.8%、「マイナスの影響」は2.4%となった=図表1参照

(図表1)全国旅行支援の影響(帝国データバンクの作成)
(図表1)全国旅行支援の影響(帝国データバンクの作成)

   旅行支援策の影響を直接受けやすい業種(飲食店/旅館・ホテル/娯楽サービス/旅行/旅客運輸)で見ると、「プラスの影響」が73.0%となり、全体の平均を大幅に上回った=再び図表1参照

   企業からは「旅行の需要がすごい勢いで増えている」(国内旅行)、「手続きが煩雑で窓口は苦労しているが、宿泊増加でプラスに働いている」(旅館)という直接的な好影響の声が多く挙がっていた。

   また、間接的なプラスの影響として、「交通関係の製品製作を行っており、旅行者が増えることによって交通関係事業者の収益が増えれば、当社の受注も増える」(輸送用機械器具製造)、「観光業界が利用しているITシステムの改修などが活発になると予想する」(ソフト受託開発)といった期待の声も聞かれた。

円安の今、外国人旅行客がどんどん来てほしい(写真はイメージ)
円安の今、外国人旅行客がどんどん来てほしい(写真はイメージ)

   一方で、「急な需要の変化に対し、人手不足からお客さまへ100%の対応が難しく、機会損失が起きてしまうことが課題。オペレーションが破綻しないように苦慮している」(旅館)といった新型コロナ禍で低迷していた旅行需要が急激に膨らんだため、人手不足からサービス提供が追いつかない課題も浮かび上がった。

   さらに、間接的なマイナス影響として、「お金や時間が、教育サービス業界から観光・旅行業界に流れてしまう」(パソコンスクール運営)、「出張のためのホテル予約が取りにくい」(不動産鑑定)といった不満の声も出ている。

「外国人観光客の購買行動に期待したい」

   また、「水際対策の緩和」について、自社の企業活動へどのような影響(直接・間接を問わず、見込みを含む)があるか聞くと、「プラスの影響」があると答えた企業は32.2%で、3社に1社の割合となった。「影響はない」が49.1%、「マイナスの影響」は6.2%となった=図表2参照

(図表2)水際対策の緩和の影響(帝国データバンクの作成)
(図表2)水際対策の緩和の影響(帝国データバンクの作成)

   企業からは、「水際対策の緩和と円安で、外国人の購買意欲の向上が見込まれる」(貴金属製品小売)、「インバウンドが増えると、ホテルや飲食店へ派遣するスタッフの依頼が増加する」(労働者派遣)、「(イスラム教徒向けの)HALAL(ハラール)認証食品という特殊な食材を扱っているため、インバウンド効果に期待している」(食肉卸売)といった直接的な好影響の声があがった。

   さらに、ビジネス上の海外との往来活発化を見込んで、「ビジネスの往来が新型コロナ前に近づく」(ゴムベルト製造)といった歓迎の声もあった。

   その一方で、マイナス影響として、「新型コロナやインフルエンザなどの感染拡大は大いに不安」(冷凍水産食品製造)、「日本は感染対策をきちんとしているのに対し、海外は日本ほど感染対策をしていないと思うので、感染が広がる可能性がある」(金属工作機械製造)など、訪日外国人を含めた人流の増加を不安視する声もあがっていた。

不安の声多い新型コロナの感染対策が課題

観光地でたくさん買い物をしてくれることを期待したい(写真はイメージ)
観光地でたくさん買い物をしてくれることを期待したい(写真はイメージ)

   今回の調査結果について、帝国データバンクではこうコメントしている。

「国内観光需要およびインバウンド需要などが盛り上がり、直接関係する業種に加え、関連する他業種へ間接的なプラスの影響が波及すると予想される。コロナ禍によって停滞していた人の移動が活発化することで、消費マインドの高揚や日本経済の活性化が期待される。
一方で、企業から『全国旅行支援及び水際対策の緩和はプラスだが、人材不足など受け入れ対策に課題がある』(旅館)との声があるように、施策の効果を十分に発揮するため、人手不足による機会損失を防ぐほか、不安の声があがる新型コロナの感染拡大防止に努めていくことが課題となろう」

   調査は、2022年10月14日~18日、インターネットを通じたアンケートを行い、1325社から有効回答を得た。そのうち大企業は180社(13.6%)、中小企業は1145社(86.4%)だった。

(福田和郎)

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