22世紀、選挙はアルゴリズムに?...民主主義「再発明」する革命的な提案、話題の一冊

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「無意識データ民主主義」の提案

   だが、逃走はどこまで行っても逃走でしかない、として、今日の世界環境を踏まえた民主主義の再発明を提案している。それは、「無意識データ民主主義」である。こう説明する。

「インターネットや監視カメラが捉える会議や街中・家の中での言葉、表情やリアクション、心拍数や安眠度合い......選挙に限らない無数のデータ源から人々の自然で本音な意見や価値観、民意が染み出している『あの政策はいい』『うわぁ嫌いだ』といった声や表情からなる民意データだ。個々の民意データ源は歪みを孕んでハックにさらされているが、無数の民意データ源を足し合わせることで歪みを打ち消しあえる。民意が立体的に見えてくる」

   そこから意思決定を行うのは、アルゴリズムだ。人々の民意データに加え、GDP・失業率・学力達成度・健康寿命・ウェルビーイングといった成果指標データを組み合わせた目的関数を最適化するように作られる。

   エビデンスに基づき、目的を発見し、エビデンスに基づいて政策が立案される。「民主主義とはつまるところ、みんなの民意を表す何らかのデータを入力し、何らかの社会的意思決定を出力する何らかのルール・装置である」と説明する。

   選挙は「雑なデータ処理装置」で欠陥だらけだが、数百年前の段階でギリギリ全国を対象に設計・実行できたデータ処理装置が選挙だから、今も続いているという。

   「無意識データ民主主義」の萌芽は、アメリカの金融政策にすでにあり、公的歩合をどの水準に設定するかを助けるためのマクロ経済予測アルゴリズムが存在するそうだ。

   無意識民主主義が実現すると、生身の政治家は不要になる。ネコのような存在になるとも。「ネコやアルゴリズムに責任が取れるのか」という疑問に対し、「そもそも人間の政治家は責任を取れているのだろうか」と反論している。

   壮大な「思考実験」のようにも思えるが、成田さんはSFでも構想でもなく、「予測」だと自信を持っている。無意識データ民主主義を実現するデバイスはできつつある。

(渡辺淳悦)

「22世紀の民主主義」
成田悠輔著
SB新書
990円(税込)

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