百貨店の2022年お歳暮商戦が早くも本格化している。
急速に進む円安やロシアによるウクライナ侵攻の影響などで値上げラッシュが激しいなか、調味料など生活必需品のラインアップを充実させる店が多い。
また、新型コロナウイルスと共生する「ウィズコロナ」の生活に移行しつつあると見て、家族や友人が集まって楽しむアイテムを充実化させる動きも目立つ。
大丸松坂屋「しょうゆ、ビール、コーヒーなど販売強化」、松屋「お値段すえ置き」アピール
J・フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店はすでに、10月初旬からインターネット受注を開始し、店頭での注文も11月1日から受け付ける。
同社によると、22年夏のお中元商戦では、コーヒーなど日ごろから食卓で使う実用的な食品が好調だったという。春以降、食品をはじめとした値上がりが続いたことが要因だとして、「お歳暮商戦でも引き続き、生活必需品の需要が拡大するだろう」と予測。しょうゆなどの調味料やビール、コーヒーなど身近な食品の販売を強化する。
松屋は「お値段すえ置き」とうたい、夏と比べて価格を変えないことをPRした実用品をそろえた。
フランス産バターやオイルの詰め合わせなど品目は多く、「今、贈るなら実用品ギフトがお薦め」と呼びかける。同社は食用油などが2022年の売れ筋の上位に入るのではないか、とも予想している。
阪急阪神百貨店、大丸松坂屋、松屋...ホームパーティー当て込んだラインアップ
他方、コロナ禍のもとでの巣ごもり状態は、今冬はほぼないだろうと見て、人が集まることを前提とした商品に力を入れる動きも目立つ。
エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング傘下の阪急阪神百貨店は「食卓を囲み、みんなで笑顔になれる料理やお菓子を強化した」とする。クリスマスにドイツで食べられる伝統菓子「ブリアン」など、見た目も華やかな商品を多数集めた。
大丸松坂屋も「織りなす笑み」、松屋は「みんなが集まる年末年始に喜ばれるギフト」をそれぞれテーマに掲げ、ホームパーティーで使えるような詰め合わせ商品のラインアップも充実化させている。
お歳暮はかつて、1年間お世話になった人に感謝を表すイベントとして、儀礼的な側面が強かったが、そのあり方が近年、変わってきていると言われている。
こうした中、高島屋は「自宅用のニーズやカジュアルギフトの利用が増えている」として、アフタヌーン気分を味わえるスイーツなど、ギフトとしてだけでなく、自宅でも楽しめる商品を拡充した。
2022年は食品の値上げが続く厳しい経済状況の中でのお歳暮商戦だが、「自分へのご褒美など、用途が広がり、需要が拡大してくれれば」(百貨店社員)との期待が高まっている。(ジャーナリスト 済田経夫)