自転車部品大手、シマノの株価が2022年10月19日の東京株式市場で、取引終了にかけて下げ足を速め、前日終値比1320円(5.8%)安の2万1395円と、当日安値が終値になった。
この日にゴールドマン・サックス(GS)証券が配信したリポートで、投資判断を3段階の真ん中から最下位の「売り」に格下げし、目標株価も2万3500円から2万円に引き下げたことが材料となった。その後やや持ち直しているが、反転の勢いは鈍い。
海外売上高比率9割近いグローバル企業...欧州市場は、全体の売上高の4割
GSのリポートによると、シマノの主力である欧州市場が、インフレやウクライナ情勢によって失速する可能性があることなどを格下げの理由にしている。
10月21日にはメリルリンチ証券も投資判断を3段階の最下位に維持しつつ、目標株価を2万300円から1万9700円に引き下げる動きもあり、外資系証券のシマノを見る目が厳しくなっている。
ここで、シマノという会社について確認しておこう。
1921年に大阪府堺市(当時すでに市制が導入されていた)で、島野鉄工所として創業した。今も、本社は堺市に置いている。当初から自転車部品を手がけていた。
戦後も変速機やブレーキなどの自転車部品づくりに磨きをかけ、スポーツ用などに使われる海外の高級自転車に採用されていった。
現在は海外売上高比率が89.9%(2021年12月期)にまで高まっている、文句なしのグローバル企業だ。特に、欧州は全体の売上高の4割を超えるまさに主力事業であり、欧州経済の動向はシマノの経営に直結する。
近年は釣り具にも注力しており、売上高全体の2割弱を占める。釣りはコロナ禍で密を避けられるレジャーでもあり、シマノの収益に貢献している。
22年12月期は売上高、最終利益とも過去最高と見られるが...「23年は特需反動の見込み」
2021年12月期の売上高は前期比44.6%増の5465億円、営業利益は79.3%増の1482億円、最終利益は82.7%増の1159億円。今期(2022年12月期)は3期連続の増収増益予想を公表しており、売上高、最終利益ともに過去最高が見込まれている。
いわば、飛ぶ鳥を落とす勢いだったわけだが、ここへきて世界経済、なかでも欧州経済の減速が意識され、シマノの株価の重しになっている。
SMBC日興証券は9月下旬に「中長期的な成長は期待できるが2023年は特需反動の見込み」と題するシマノのリポートを配信し、「2023年12月期は市場全体が調整局面に入る」と指摘していた。
ただ、さらなる成長力を秘める数少ない日本企業であることには変わりない。インフレやウクライナ情勢の動向などによって「買いどき」とみる投資家が増える可能性もありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)