「巨大な氷塊に向かうタイタニックのよう」
ヤフーニュースのコメント欄では、スナク氏の前途多難ぶりに注目する意見が相次いだ。
同志社大学政策学部の吉田徹教授(比較政治・ヨーロッパ政治)は、
「『棚からぼた餅』式に首相の座を手に入れたスナク氏だが、茨の道を歩むことは必須だ。もともと財政再建論者、さらにインフレ下では緊縮に出ざるを得ず、これは多くの庶民にとってはマイナスに働く。そんな状況になれば、(次期総選挙で)すでに30%ポイントもある労働党との差はますます開いていくことになり、選挙には不利になる。そうすると、では首相を変えるか、という話になるだろが、では誰か有力候補がいるかといえば、そうでもない。火中の栗をあえて拾ったスナク氏がどう窮状を切り抜けるか、注目したい」
と、手腕に期待した。
同欄では、東京大学大学院法学政治学研究科・法学部の遠藤乾教授(国際政治)も、
「2年後の総選挙での勝利は、スナク新首相には荷の重いものだろう。理由は三つある。最大の理由は、今後の経済にある。前任のトラスのように自ら市場を混乱させる愚は犯さないかもしれないが、元々コロナ、ウクライナ、そして何よりBrexit(ブレグジット、EU離脱)の後遺症で他国と比べても厳しい状況にある。(中略)第二に、保守党内の対立である。イデオロギー的に先鋭化した党で経済的に穏健・健全な路線を歩むのは簡単ではない」
と指摘したうえで、スナク氏自身の「資質」にも触れた。
「第三はスナク自身。税逃れのスキャンダルに加え、自身が引き金となってジョンソン政権が倒れたという恨みがいつまた新首相向けられるか分からない。一度下野したほうが、立ち直りが早いように思うが、手にした権力を自ら離すのは強いられた時のみだろう。今の保守党は、巨大な氷塊に向かうタイタニックのようだ」