「モノ言う株主」として日本の原発止めろと主張した過去
「庶民感覚」を知らないと批判されているスナク氏に英国経済の再生ができるのだろうか。エコノミストはどうみているのか。
日本経済新聞オンライン版(10月26日付)「スナク氏『深刻な経済的課題』 英新首相、市場は歓迎」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、ニッセイ基礎研究所研究理事の伊藤さゆりさんは、
「財政健全化重視路線への回帰を歓迎する市場。しかし、国民は歓迎一色とはいかないだろう。スナク政権が進めると見られる歳出削減には、10.1%に達したインフレ率に連動するはずの公的年金支給の伸び率を抑えるなど、生活費危機下の英国民に痛みを強いるものも含まれる可能性がある」
と指摘。そのうえで今後の難問は、
「大規模減税策の大部分は撤回されたが、スナク首相が財務相として決めた『国民保険料の引き上げの撤回』はまだ生きたままだ。保険料引き上げは、深刻化する国民医療サービス(NHS)の逼迫緩和のために財源として決めたもの。国民の関心が高いNHSの改善のための財源の問題にどのような道筋をつけるのかも注目している」
と、財政健全化の道筋をどうつけるかにあるとした。
同欄では、日本経済新聞社特任編集委員の滝田洋一記者が、スナク氏と日本との関わりについて触れ、
「スナク氏はリーマン・ショック前に、物言うファンドである『ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)』に属していました。スナク氏がパートナーを務めていた当時、このTCIはリーマン・ショック前にはJパワー(電源開発株式会社)の大株主になって、経営改革を迫りました」
と説明。つづいて、
「株主としての当時の要求は、(1)大間原子力発電所(青森県下北郡大間町)の店じまいや、(2)本州と北海道の送電網の増設の中止でした。これらの策を採用すれば、Jパワーの収益性が向上し株主価値が高まる、と主張したのです。日本側はエネルギー安全保障の観点から、この主張を退けました。英国を含め欧州のエネルギー危機が深刻化するなか、新首相はこのディール(取り引き)の教訓をどう生かすのでしょうか」
と、やや皮肉を込めた。