JIPに与えられたのは、「独占交渉権」ではない...官民ファンドのJIC巻き返しも
ただ、JIPに与えられたのは優先交渉権で、「独占交渉権」とは異なる。
東芝は他陣営とも並行して交渉でき、「現時点では、どの候補とも合意に達することを確約するものではない」との姿勢だ。
JICは、やはり2次入札に進んでいる米投資ファンドのベインキャピタルと連携する考えとされる。ほかに、カナダの投資会社ブルックフィールド・アセット・マネジメントも2次入札に進んでいるが、外為法の規制を考えると、JIP陣営とJIC陣営の争いという構図になる。
両陣営の再建計画の内容は不明だが、両陣営ともインフラ事業を中心にした再建を図る点は共通するとみられる。
JIPはインフラ事業の取引先を中心に出資を募り、事業基盤を安定させる考えとみられる。一方、JIC陣営にベインが参画した場合は、ベイン主導で買収されたNAND型フラッシュメモリ製造の世界的大手、キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)を含む事業再編が視野に入ってくる可能性も指摘される。
JIPに優先交渉権が与えられたとはいえ、最終的な落ち着き先は、まだまだ見通せない状況といえる。(ジャーナリスト 済田経夫)
<東芝年表>
2015年 4月 不正会計が発覚
2016年12月 米原発事業での巨額損失を公表
2017年12月 6000億円の第三者割当増資
2020年 1月 子会社で不正会計が発覚
2021年 4月 英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる買収提案が判明/車谷暢昭社長辞任、綱川智会長が社長に復帰/CVCが買収提案を事実上撤回
2021年 6月 20年の株主総会の運営が不公正だったとの調査報告書公表/株主総会で永山治・取締役会議長らの取締役再任否決
2021年11月 会社を3分割する方針を公表
2022年 2月 3分割計画を2分割に修正
2022年 3月 綱川智社長が事実上引責辞任、島田太郎氏が後任に就任/臨時株主総会で2分割計画否決
2022年 5月 再建計画の提案締め切り、非上場化8件などの提案
2022年 6月28日 定時株主総会でファンド幹部2人を含む13人の取締役を選任
2022年 7月19日 国内ファンドなど4陣営が2次入札に進む
2022年 10月 JIPに優先交渉権
<J-CASTニュース バックナンバー>
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