誰も中国発「デフォルト」リスクを止められない...
ところで、仮に「半導体問題」は乗り越えられても、中国経済の大きなリスクになっているのが不動産バブル崩壊だ。中国の深刻な不動産不況が世界経済の大きなリスクになりかねないと警告するのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏のリポート「深刻な不動産不況が続き逆風が強まる中国経済」(10月20日付)によると、10月第1週の中国主要都市70都市における新築住宅販売は前年比マイナス44%の大幅減、不動産分野の社債のデフォルト(債務不履行)が世界金融市場の大きなリスクになっている。
「JPモルガンによると、新興国の高利回り社債の年初来のデフォルト率は、10.3%に達している。ロシアでのデフォルト増加を主因に欧州新興国のデフォルト率は21.7%に上昇する一方、中国の不動産企業の経営悪化でアジア全体のデフォルト率も12.8%に達した。
さらに、デベロッパーが大半を占める中国のドル建てジャンク債の価格は、足元で最安値を更新している。ブルームバーグ社の指数によると、中国のドル建てジャンク債は額面1ドルに対して、17日には55.7セントの水準にある」
この住宅不況をさらに深刻化させたのが、習氏が打ち出した社会主義的な平等を追求する「共同富裕」の理念に基づく政策だった。
「(経営破綻した)デベロッパーを政府が直接救済すれば事態は改善するだろうが、それでは従来の政策方針を修正し、それが誤りだったと認めることになってしまう。デベロッパーへの統制強化は、不動産価格を高騰させ個人の住宅購入を難しくさせるとともに、巨額の利益を上げる経営を改めさせることが目的だ。これは、習近平国家主席の『共同富裕』の理念に基づく政策と考えられる」
「共同富裕」は、共産党大会で習氏の政治的地位とともに思想的地位も確立され、「忠誠」の対象になった。その思想のもとで行われてきた政策が修正されることは一層難しくなる。それだけに、木内氏は、こう警告する。
「デベロッパーや関連業種の経営不振が住宅不況をより深刻にさせ、中国経済への逆風が長引くのではないか。それ以外にも、習近平国家主席が主導してきたと考えられるゼロコロナ政策、IT産業・教育産業への統制強化なども継続し、経済の逆風が続くことになるのではないか。
さらに、来年にかけては世界が景気後退入りする可能性もある。また、中国の人口減少、米国の対中デカップリング政策の影響なども加わるのである。習近平国家主席が異例の3期目入りを果たすタイミングで、中国経済はまさに歴史的な逆風に晒されることになるだろう」
(福田和郎)