半導体をめぐる米国VS中国の経済対立のゆくえ
米国と中国の経済対立でいえば、10月7日、米政府が中国に対する半導体分野の追加規制措置を発表し、金融市場に衝撃を与えた。
米国は従来から、中国の先端半導体を使ったハイテク企業や半導体製造企業へ、ピンポイントで輸出規制を行ってきたが、対象を広げて先端の半導体を使った製品や製造設備の輸出そのものを幅広く規制対象とした。
こうした動きに中国はどう対抗しようとしているのか。
日興アセットマネジメントホンコンリミテッド副社長の山内裕也氏のリポート「米国の新たな対中規制」(10月21日付)によると、「米国の措置は市場に衝撃を与えたが、中国国内の投資家は半導体産業全般になお弱気ではない」という。いったい、どういうわけか。
山内氏は、こう説明する。
「外資系企業が中国で先端設備に投資することも難しくなる。TSMCやサムスンが中国で有する半導体工場も対象となるため、(中略)今後は中国での投資内容を再考せざるを得ないだろう。中国の半導体企業に米国籍技術者は少なからずおり、技術の向上に貢献していると見られるが、これも今回米国政府は禁止した。人も物も引き上げる、徹底した措置である」
しかし、中国はこれを成長のチャンスととらえるかもしれないというのだ。
「中国については、国が先頭に立って半導体産業育成に資源を投入してくることはよく知られている。(中略)この『国産技術の強化』というテーマの影響力は、強くなっていく可能性が大きい。今回発表された共産党の党大会報告において、『セキュリティ』はかなり重要なキーワードだった。ここには、外国の政策により中国の科学技術の発展が妨げられない、という『セキュリティ』の確保も含まれる」
「先端技術の獲得のため、中国政府はこれまで以上に力を入れてくる可能性は高い。また、中国企業の成長を阻む原因の一つは強力な欧米企業の存在だが、それが中国に入ってないなら、競争環境は改善するとの考え方もある。中国の半導体市場規模は世界有数であることからも、中国企業が成長するチャンスは必ずあるはずだ、との見方は根強い」
実際、米国による半導体規制の発表後、いったん大きく下げた半導体セクターの株価も、先週の後半(10月中旬)にはかなり戻した。山内氏は、中国側のしたたかさをこう指摘する。
「厳しい環境の中でも、中国の半導体産業が、なお投資家の支持を得ている背景には、このような見方が支えになっているのではないか」