忖度・忠誠合戦...習氏の意図を超えて、暴走するリスクに
「習近平氏は社会主義的な志向が強く、暴走するリスクをはらむ」と懸念するのが大和総研主席研究員の齋藤尚登氏だ。
齋藤氏は、リポート「習近平氏一強の中国はどこへ向かうのか」(10月24日付)の中で、「習一強の独裁政権」誕生のショックをこう表現した。
「筆者(=齋藤氏)は、さまざまな背景・立場の政治家が政策を練り上げていくことが可能な、ある程度のバランスが取れた新指導部体制となることが望ましい、と考えていたが、その期待はすべて打ち砕かれた」
そして、こう続ける。
「『一強体制』では、習近平氏が一度始めた政策がたとえ誤りであったとしても途中での軌道修正が難しくなる。さらに、忖度・忠誠合戦は政策の立案・遂行が習近平氏の意図を超えて、あるいは意図に反して暴走するリスクをはらむ」
「習近平氏は社会主義的な志向が強く、今後はこうした政策が強化される可能性が高い。経済・産業・企業に対する共産党・政府によるコントロール強化がキーワードになろう。昨年来のアリババ、テンセントなどへの規制強化や、民営デベロッパーをターゲットにした中国版総量規制の導入など、こうした動きは既に顕在化している。これでは経済や市場、企業の活力は失われ、閉塞感が強まりかねない」
さらに、経済面でも西側諸国との軋轢が深まる可能性が高い、と指摘する。
「習近平総書記による党大会『報告』の経済に関わる部分では、質の高い発展やイノベーション重視などが重点に掲げられた。たとえば、中国が製造強国・品質強国・宇宙開発強国・交通強国・インターネット強国・『デジタル中国』の建設を加速すれば、米国との対立・軋轢はより深刻化する。当然、この問題は日本も避けて通れない」