上海ロックダウンで経済に打撃を与えた人物が、経済政策の舵取り役?
こうした事態をエコノミストはどう見ているのか。
「習近平氏の習近平氏による習近平氏のための」政治体制を確立するための共産党大会だった、と指摘するのは第一生命経済研究所主席エコノミストの西濵徹氏だ。
西濵氏のリポート「中国・習近平政権3期目は『側近だらけ』、党大会閉幕で経済指標も一気に公表」(10月24日付)では、経済政策をリードしてきた「改革派官僚」が一斉に姿を消し、統制色が強まることが「世界経済のリスク要因になる」可能性は高いと懸念する。
特に、経済政策面では、以下の人事が今後大きな問題になるという。
(1)最高幹部である党中央政治局常務委員の中に、習氏に諫言できる人物が1人もいない。習氏を含む7人中5人が「子飼い」で、また後継者と目される実務に長けた若手もおらず、習氏の「長期独裁」が続く可能性がある=図表1参照。
(2)経済政策で「ゼロコロナ」に固執する習氏と一定の距離を保ってきた李克強首相らが退任。代わりに李強氏(上海市党委書記)や何立峰氏(国家発展改革委員会主任)らが習政権3期目の経済政策を担う。
李強氏は上海市長として習近平氏の「ゼロコロナ」を忠実に守って上海市のロックダウンを強引に進め、中国経済が頭打ちになる要因を作り、政策運営に疑問符がつく。何氏は習近平氏の福建省時代からの腹心の部下といわれるが、手腕が未知数だ。
(3)改革派官僚とされる易鋼氏(中国人民銀行総裁)や郭樹清氏(中国銀行保険管理委員会主席)が今後の経済政策運営から離れる。
ところで、共産党大会直前に突然、「人民経済」という概念がSNSなどを通じて拡散、今後の中国経済のあり方をめぐって論争を呼んでいた。そのこともあり、西濵氏はこう結んでいる。
「市場経済の後退を示唆する『人民経済』という言葉に注目が集まる動きもみられるなど、高い経済成長の実現を後押しした改革開放路線は、掛け声とは裏腹に逆行の度合いを強めることも考えられる。2000年代以降の世界経済は中国経済の高い成長におんぶに抱っことなることで、その成長を享受することが出来たものの、今後はそうした構図が完全にリスク要因となる可能性に注意が必要と言える」