デジタルは生産性やウェルビーイングを高めたのか?
一方、デジタルは人々の生産性やウェルビーイング、もしくは、生活満足度を高めたかについても検証している。
テレワークによって浮いた通勤時間は、日本全体で17億7500万時間、テレワーク利用者1人当たり年間90時間と推計している。金銭価値に換算すると、テレワークによって増えた「可処分時間」の価値は2.2兆円だとしている。
生産性への影響は、プラスとマイナスが拮抗している、と見ている。テレワークによる仕事のパフォーマンス変化を業種別にみても、まばらで一概に特徴を言うことができないようだ。
しかし、生活満足度の向上には大きなプラス効果があり、テレワークはプラス、マイナスの両面を増幅する、と指摘している。そして、ストレスに対処する「健康生成能力」が高い人ほどテレワークからプラス面を生み出す、と結論づけている。
本書では、このほかデジタルによる都市機能の複合化や、デジタルが生み出す増価蓄積社会のモデルについて論じている。
データの価値推計の難しさや既存の会計ルールではデジタル企業の実態を捕捉できないなどの課題もあるが、「デジタル増価」という考え方が広まりつつあることは押さえておきたい。
(渡辺淳悦)
「デジタル増価革命」
此本臣吾監修、森健編著
東洋経済新報社
1980円(税込)