注意すると、すぐに「パワハラ」と言い立てる部下...どう対応する?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE 14(前編)】(前川孝雄)

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パワハラと部下指導の境界線

   組織を運営していくうえでは、上司として部下を注意したり、叱ることもあるでしょう。一方、然るべきときに部下を褒めることも大切です。

   しかし「叱る」「褒める」というのはなかなか難易度が高く、その仕方に上司力が現れるともいえます。

   パワハラ防止法が施行されたこともあり、近年はアンガーマネジメントが多くの企業で採用され、流行になっています。その理由は、法令順守の観点のみではなく、企業が置かれた状況の大きな変化によると考えられます。

   かつては上司からパワハラまがいの言葉を受けても、部下は我慢しがちでした。そもそも、パワハラという概念もありませんでした。終身雇用と年功序列の中でいずれ出世し、給料が上がり、退職金も入るから...という考えも背景にはあったでしょう。

   しかし、現在その理屈は通用しなくなっています。若年層を中心に「我慢はしたくない、頑張った分はすぐリターンが欲しい」という欲求が高まっています。

   一方で、「ハラスメントになるような言動はご法度」ということが社会的に認知されてきました。これにより、ハラスメントの受け手となりやすい部下の側は、自分が違和感を覚えたり傷ついたりしたとき、すぐに「それはハラスメントではないですか?」と口にしやすくなったといえます。

   そうした環境の中、企業や企業のマネジメント層は、部下に感情を向けることに非常に過敏になり、怒りを抑えるアンガーマネジメントが求められてきたと思われます。

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