免税事業者のままでは、取引を打ち切られる可能性
免税事業者のままだと取引を打ち切られる可能性が大きいことについて、繰り返し強調している。
適格請求書発行事業者ではない事業者が発行する請求書は、消費税の仕入税額控除の対象にならない。その分、発注元である課税事業者が負担する消費税額が増えてしまう。
「消費税率が10%だとすれば、ほぼ1割仕入値がアップするのと同じ」ことだから、発注元は免税事業者やインボイス制度への未登録事業者との取引をやめ、適格請求書発行事業者への切り替えを進めることになる、と予想している。
◆白色申告から青色申告への切り替えを
個人事業主やフリーランスが課税事業者になると、これまでの所得税の確定申告に加え、消費税の確定申告が必要になる。申告期限は対象となる年の翌年1月1日~3月31日と、所得税の確定申告とほぼ同時期な上に、納税額の計算も所得税に比べて複雑だ。
現実的には会計ソフトの機能に頼るか、税理士などに頼むことになる。土屋さんは、「現在、白色申告の人はインボイス制度の開始を契機に、青色申告への移行を検討してみてもいいでしょう」とアドバイスしている。
一方、経理の負担増を避けるために、簡易課税を選択するのも一つの手だ。
受け取った請求書が適格請求書や適格簡易請求書であるかどうかの確認が不要、免税事業者からの仕入でも、消費税の納税額が増えないなどのメリットがあるが、業種による簡易課税の「みなし仕入率」によっては、不利になるケースもあるので注意が必要だ。
簡易課税の届出では、事業区分がポイントになる。
第1種事業(卸売業)から第6種事業(不動産業)まであり、みなし仕入率は90%から40%まで異なる。国税庁がフローチャートを示している。ごまかしは利かないので、正しく自己判定することが大事だ。
企業の経理担当者は適格請求書かどうかの選別など、これまで以上に負担が増えるだろう。また、一般社員に対してはタクシーや飲食店、小売店などの領収書やレシートが「適格簡易請求書である業者を利用すること」などの通達が出ることが予想される。
税制度は複雑だ。個人事業主やフリーランスの人は、本書などを利用して、自己防衛をしておく必要がある。
(渡辺淳悦)
「60分でわかる インボイス&消費税 超入門」
土屋裕昭著
技術評論社
1320円(税込)