2023年10月1日から消費税法が変わり、インボイス制度が導入される。個人事業者やフリーランスなど多くの人に影響があるといわれている。本書「60分でわかる インボイス&消費税 超入門」(技術評論社)は、そのポイントを要領よくまとめた本だ。
「60分でわかる インボイス&消費税 超入門」(土屋裕昭著)技術評論社
著者の土屋裕昭さんは税理士、CFP、登録政治資金監査人。幅広い法人クライアントをサポート。共著に「小さな会社は『決算だけ』税理士に頼みなさい」「やさしくわかる経理・財務の基礎知識」などがある。
2023年10月1日からスタートするインボイス制度...登録するとトクなのか?
インボイス制度とは、2023年10月1日からスタートする、事業者が納める消費税額の計算に関する新しいルールだ。
消費税の納税額の計算は「売上時に預かった消費税-仕入や経費で支払った消費税」(原則課税)が原則だが、受け取った請求書や領収書がインボイス(=適格請求書等)でないと、その分の消費税を差し引けなくなる。
インボイスは、従来の請求書や領収書に「登録番号」や「税率ごとに区分した消費税額」などを記載したものだ。登録番号をもらうためには、国税庁にインボイス制度への登録申請をして、「適格請求書発行事業者」になる必要がある。本書では、登録申請の手続きも説明している。
登録申請は2021年10月1日から2023年3月1日までが原則なので、最近、インボイス制度への関心が高まっているわけだ。
すべての事業者がインボイス制度への登録が必要かというと、そうではない。登録は任意だ。登録しないほうがトクな事業者もいる。ただし、個人事業主も含め、登録しないと、不利益を被る事業者のほうが多いと、土屋さんは予想している。
なぜなら、請求書を受け取る側(売上先)が原則課税を採用している場合、登録していない業者からの請求書や領収書の消費税を差し引くことができず、消費税の納税額が増えることになる。そのため、取引を打ち切られる可能性が考えられるからだ。
本書の冒頭に、登録すべきかどうかを判定するシートが載っている。消費税の納税義務は2年前の課税売上高で決まる。1000万円超であれば、課税事業者となって消費税を納める。一方、1000万円以下であれば免税事業者となる。
◆登録する必要性が高い業種、低い業種
業種別に免税事業者のインボイス制度への登録の必要性を検討している。
登録の必要性が高いのは、「士業・コンサルタント、システムエンジニア、フリーライター、一人親方など」だ。売上先が課税事業者(原則課税)の可能性が高い。または、免税事業者であることを知られると、ブランドを損なう恐れがあるからだ。
「飲食店や小売店など」は、ビジネスの形態によって判断が必要だという。領収書を必要とするビジネス利用客が多ければ、登録する必要性が高くなる。
一方、「学習塾、理髪店、歯科医院、マッサージなど」は、経費精算のための請求書や領収書を必要としない個人客が多いので、登録する必要性は低い。