「政府・日銀は、米国から制約をかけられている?」
12月中旬には1ドル=160円に達する可能性もある、と警告するのは野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「1ドル150円を超えて円安が進行:円安の一巡には米国金融政策姿勢の修正を待つしかない」(10月20日付)のなかで、政府・日銀がなかなか再度の介入に動かないのは、米国からなんらかの制約をかけられているではないか、と推測する。
「政府の為替介入は、9月22日以降、明確に確認されている範囲内では行われていない。過去の為替介入では、一度政府が為替介入に踏み切ると、しばらくは断続的に、時には毎日のように為替介入が実施されることが多かった。それと比べると、今回の為替介入姿勢は非常に慎重であり異例である」
「これは、日本政府が円安の流れを食い止める、あるいは円高方向に変えるための介入ではなく、G7の合意を尊重して、『為替レートの過度の変動や無秩序な動き』が生じる場合にそれをけん制する狙いで実施することを為替介入実施の条件としていることが理由なのではないか。あるいは、米国当局から事前に為替介入実施の承認を取り付けた際に、そのような条件を付されたのかもしれない」
現在のように過度な変動ではなく、ジワリジワリと上がり続けている状態では、米国の了承が得られにくいのではないか、というわけだ。
そして、円買いドル売り介入を行なった9月22日以降、むしろ円安進行のペースは上がっており、そのペースのままジワリジワリと上がっていけば、12月中旬には「次の節目」である、36年前の1986年につけた「1ドル=160円20銭」に達するという。
木内氏はこう結んでいる。
「この先は、米国で景気減速傾向が次第に強まる中、ドル高進行のペースも徐々に低下していくことを前提に、年末から来年初めのタイミングで、1ドル160円の手前で円安に歯止めがかかる、と現状では考えておきたい」