再び国民不在の新首相選びをするのか?
こうした事態をエコノミストはどう見ているのか。
「トラス首相が辞任に追い込まれることは避けられないが、その混乱が英国経済後退にさらに拍車をかける」との見方で警告するには、第一生命経済研究所首席エコノミストの田中理氏だ。
田中氏はリポート「トラスノミクスの解体が進む~トラス減税見直し後も巨額の財政の穴~」(10月18日付)のなかで、「方針転換後も300~400億ポンド(5兆円~6兆7000億円)の追加の財政赤字削減が必要となる」と指摘する
そして、来年(2023年)4月にはエネルギー料金の凍結が終了し、消費者物価を大きく押し上げる。もはや「大胆な方針転換でトラス首相のレームダック化は避けられず、当面はハント財務相が経済財政運営の舵取りを担うことになる」と予測する。
「就任から僅か1か月余りでトラス首相は政権の統治能力を失った。辞任は時間の問題とみられるが、トラス首相選出時のような2か月近くにわたって、保守党の後継党首の選出手続きを行えば、投票機会を持たない多くの有権者の反発を招く恐れがある。(中略)後継首相を決める保守党員は、英国の有権者の0.3%程度に過ぎず、国民不在の首相選出と映りかねない」
この混乱の間に「短期的には英国経済のマイナス成長転落は避けられそうにない」というのだ。