英国経済の大混乱が収まらない。トラス政権は2022年10月17日、「ポンド安」「株安」「債権安」の「トリプル安」を招いた大規模減税を柱とする「バラマキ政策」をほぼ全部撤回した。
トラス首相は金融市場の動揺を抑えるため、責任をクワーティング前財務相に負わせるかたちで解任、ハント氏を新財務省に任命した。しかし10月19日、バーマン内相が抗議の辞任をするなど、「トラス降ろし」が始まった。
このリーダー不在の英国の混乱が「英国発金融危機」を招きかねないとエコノミストは指摘する。大丈夫か、世界経済?
10%を超える物価高、英国民の半数「食事を減らしている」
英国立統計局(ONS)が10月19日に発表した消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月に比べプラス10.1%と、今年7月と並び40ぶりに2ケタの高水準になった。
英国を代表する食べ物と言えば、「フィッシュ&チップス」がおなじみだ。タラなどの白身魚のフライに、棒状のポテトフライを添えたもの。しかし、英メディアなどによると、ロンドン市内の専門店では今年に入って20%以上も値上げ。1皿11~12ポンド(約1800円~2000円)もするなど、およそ「庶民の味」にほど遠いものとなった、と報じられている。
いかに、激しい物価高に英国民が苦しんでいるか。AFP通信(10月20日付)の記事によると、英消費者団体「Which?」が行った調査では、国内世帯の半数が「食事回数を減らしている」と答えた。同じく半数が「健康的な食事をするのが以前より難しくなった」と回答、80%近くが「経済的に苦しい」と答えたという。
同団体の食料政策の責任者はAFP通信の取材に、「生活費危機の直撃で数百万人が食事を抜くか、健康的な食事を取れない事態となっている。政府が光熱費抑制策の縮小を決定したため、(今冬)数百万人が十分な暖房を確保できなくなるだろう」と語ったのだった。
ロイター通信、共同通信によると、英国民の怒りはトラス首相に殺到、英大手世論調査会社「You Gov」の最新調査では、トラス氏の支持率は7%に急落、不支持率が77%に達したようだ。「英国史上最も支持されない首相」となった。与党・保守党内からも首相の引責辞任を求める声が高まり、「トラス降ろし」の動きが出始めている。