上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、スタートアップ・ベンチャー企業をはじめとする「新産業領域」への人材供給事業を展開する、株式会社スローガンです。
スローガンは、元日本IBMの伊藤豊氏(現代表取締役社長)が2005年に設立。2016年に元DeNAの仁平理斗氏(現取締役執行役員COO)を迎え、2021年11月に東証マザーズ(現グロース)市場に上場を果たしています。運営するベンチャー就活プラットフォーム「Goodfind」やスタートアップビジネスメディア「FastGrow」などの名前を通じて、存在を知っている人も多いのではないでしょうか。
2023年2月期予想は第2四半期決算で下方修正
それではまず、スローガンの近年の業績の推移を見てみましょう。
上場時のインタビューでは「2015年度以降の年平均売上高成長率は約20%」と説明されていましたが、コロナ禍の影響を受け、スローガンの売上高はここ数期横ばいとなっています。ただし利益は、2021年2月期に大きく落ち込んだものの、2022年2月には急回復。営業利益率は18.2%と大きく改善しています。
2023年2月期の業績予想は、2022年2月期の決算短信発表時には、売上高が前期比25.0%増の17億7300万円、営業利益が同37.1%増の3億5400万円(営業利益率20%)、最終利益が同14.5%増の2億3700万円と、過去最高を記録する見込みでした。
ところが、2023年2月期第2四半期の決算短信発表時には、売上高が前期比9.5%増の15億5200万円、営業利益は同0.5%増の2億6000万円(営業利益率16.7%)へと下方修正。最終利益は前期比19.6%減の1億6700万円と、減益になると見込まれています。
学生向けの就活プラットフォームが主要事業
スローガンは「新産業領域における人材創出事業」の単一セグメントですが、「キャリアサービス分野」の「学生向けサービス」および「社会人向けサービス」、そして「メディア・SaaS分野」の計3分野で事業を展開しています。
2022年2月期の売上高構成比は、「キャリアサービス分野(学生向けサービス)」が10億4600万円で73.8%と大半を占め、「キャリアサービス分野(社会人向けサービス)」が1億5000万円で10.6%、「メディア・SaaS分野」が2億2100万円で15.6%となっています。
主要事業のキャリアサービス分野(学生向けサービス)は、厳選就活プラットフォーム「Goodfind」とコンサル就活サービス「FactLogic」、長期インターン紹介サービス「Intern Street」を展開しています。
「Goodfind」は、新産業領域の企業を厳選して、新卒学生に対しセミナーやイベント等のコンテンツを提供し、企業に対し挑戦意欲・成長志向の高い人材の紹介を行うサービスです。
キャリアサービス分野(社会人向けサービス)は、ベンチャー・スタートアップ求人特化型エージェント「Goodfind Career」と、社会人3年目までの人材向けキャリア支援サービス「G3」を展開。メディア・SaaS分野は、若手イノベーション人材向けビジネスメディア「FastGrow」と、1on1のしくみをつくるSaaS型HRサービス「TeamUP」を展開しています。
なお、「FastGrow」は2022年2月末で2.2万人の登録会員がおり、中期的には月額利用課金やコンテンツ課金等の新たな収益機会の獲得を図るとしています。
新卒入社6割、平均年齢20代、平均年収504万円
スローガンの連結従業員数は、2020年2月期の98人、2021年2月期の105人、2022年2月期の120人と増加傾向にあります。
2022年2月期末の平均年間給与(単体)は504万235円。平均年齢は29.8歳、平均勤続年数は2.6年です。単体の従業員数は113人で、事業部門別では「キャリアサービス分野(学生向けサービス)」が66人、「同(社会人向けサービス)」が17人、メディア・SaaS分野が10人、全社(共通)が20人という構成です。
企業サイトによると、男女比は6:4。新卒入社・中途入社比は6:4で、新卒入社の割合が高いという若い会社です。
スローガンの採用サイトを見ると、新卒採用のほか、「キャリアアドバイザー」「コンサルティングセールス」「WEBデザイナー」「WEBエンジニア」「事業企画・コンテンツマーケター」「『FastGrow』コンテンツプランナー(企画・編集)」「SaaSエンジニア」「人材エージェント」など、幅広い職種での募集が行われています。
コンサルティングセールスの場合、想定年収は400~600万円。勤務形態は「フレックス制(コアタイム 11:00~16:00)」「原則在宅勤務」となっており、地方からのリモートワークも可能ということでしょう。
岸田内閣「新しい資本主義」の追い風は吹くか
スローガンの株価は、2022年3月28日に2100円の年初来高値を記録しましたが、10月12日の第2四半期決算で、主力サービスの「Goodfind」の受注高が予想を下回る進捗であるとして、下方修正を発表しました。
これを受けて株価は急落、10月14日には1000円を割り込みました。
2022年2月期の有価証券報告書によると、スローガンの顧客数(社)と顧客単価(千円)は、2020年2月期の491社/29万7000円から、2022年2月期の464社/30万5600円と、伸び悩んでいるのが実情です。
その一方で、岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の中で言及された「スタートアップ創出元年」が、スローガンの事業領域である「新産業領域」「スタートアップ・ベンチャー企業」に追い風を吹かせるのではないか、と期待する見方もあります。
(こたつ経営研究所)