32年前の目安は「5円刻み」、現在は「5銭刻み」
現在、32年ぶりという歴史的な円安水準に達しているが、32年前に何が起こっていたのか。日本経済は1991年にバブル崩壊を経験しているが、その入り口となったのが32年前の1990年だ。
その歴史を振り返って今後の円安の節目を分析したのが、三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト市川雅浩氏だ。
市川氏はリポート「1ドル=148円台をつけたドル円の次の目安となる水準」(10月17日付)のなかで、「1990年当時は1ドル=160円、155円、150円、145円という5円刻みが、ドル円相場の節目となった」と説明している。
「ドル円は4月2日に160円15銭水準、4月17日に160円20銭をつけ、いわゆる『ダブルトップ』を形成しました=図表2参照。ダブルトップとは、相場の天井を示すチャートのパターンですが、ドルはこのチャート通り、対円で天井を打ち、その後はドル安・円高トレンドに転じました」
その後、5月に150円水準でドル安・円高の進行がいったん止まり、6月には155円水準に戻ったものの、再びドル安・円高方向に切り返し、7月末には145円台をつけた。そこからもう一度反転したが、150円水準を超えられず、結局8月には145円を割り込んだ=再び図表2参照。
このように、当時は5円刻みが節目となったのに対して、現在はどうなるだろうか。市川氏はこう予測する。
「今局面では、(政府・日銀の)介入警戒感も強く、1990年当時のような155円、160円といった5円刻みの節目を想定することは困難と考えます。そのため148円台以降のドル円は、本邦当局の動きをにらみつつ、50銭刻みが目安となる公算が大きいとみています」
「ただ、為替介入は相場のトレンド転換を目的とするものではないため、米金利先高観が続く限り、ドル高・円安の基調も続く可能性が高いと思われます。したがって、米国の物価関連の指標で、物価の伸びの鈍化が明確に確認できない限り、ドル高地合いは変わらず、物価の伸びが続く場合は、150円を超えるドル高・円安も想定されます。このような『ドル円相場は米物価次第』という状況は、当面続くのではないかと考えています」
政府・日銀が介入を続けても米国のインフレが収まらない限り、円安は加速するというわけだ。
(福田和郎)