トランプ氏の「America First」を批判したバイデン大統領が「ドル高自賛」の変節
こうした事態にエコノミストはどう見ているのか。
日本経済新聞(10月16日付オンライン版)「米大統領『ドルの強さ懸念せず』 インフレ対策を優先」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では日本経済新聞社特任編集委員の滝田洋一記者は、
「強いドルは米国には良いことだが、世界にとっては悪いことだ(The Dollar Is Strong. That Is Good for the U.S. but Bad for the World.)――リベラル派のNYタイムズはそんな記事を載せだしました。G20でも強すぎるドルへの風当たりが。だからこそ、バイデン氏はドル高を弁護したのでしょう」
と指摘した。そのうえで、
「でも『問題は他国の経済成長や健全な政策の欠如だ』とは、バイデン氏が批判してきた一国中心主義そのものです。自らの経済刺激策が招いた米国の高インフレこそが、問題の核心にあるはず。ドル高に伴う新興国の債務危機が火を噴く時には、今の発言は忘れるのでしょうか」
と、かつてトランプ前大統領の「America First」を批判したバイデン大統領の変節ぶりを皮肉った。
ヤフーニュースのコメント欄では、時事通信社解説委員の窪園博俊記者が、
「政府・日銀は円買い・ドル売りの為替介入で対抗していますが、介入はあくまでも時間稼ぎの手段に過ぎず、金利差や貿易赤字などで円が売られる地合いを変えることはできません。(中略)為替市場では、1998年に付けた147円台後半の円安水準を達成したことで、チャート上の節目がない状態です。150円が視野に入るのは、ターゲットとしてきりのいい数字であるためです。150円達成でも円売り地合いに変わりはなく、(150円は)単なる通過点かもしれません」
と、今後も円安加速が続くと見ている。
同欄では、第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏が、
「円安の流れはいつ反転するでしょうか。結論を先取りすると、米FRBが利上げ幅縮小の地均しを開始する時だとみています。金融引き締めの『終わり』がある程度みえてくると、米長期金利はそれに先んじて低下、日米金利差は縮小し円買い・ドル売りになるでしょう」
と指摘。その具体的な時期については、
「FRB(連邦準備制度理事会)は現在0.75%幅で利上げをしています。ただし、インフレが落ち着く兆候が増してくると、景気への配慮もあり利上げ幅を縮小させるはずです。(中略)仮に11月FOMC(連邦公開市場委員会)の利上げ幅が0.75%だったと仮定すると、12月は0.5%に縮小し、上記の流れになる可能性があります」
と、今年末に流れが変わるだろうと予測した。