金融庁の尾を踏んだSMBC日興証券...異例の厳罰処分となった背景

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   SMBC日興証券の株価操作事件で、金融庁は2022年10月7日、同社に対し金融商品取引法に基づく3か月間の一部業務停止命令と業務改善命令を出した。

   親会社の三井住友フィナンシャルグループ(FG)に対しても子会社の管理を怠ったとして改善措置命令を出した。大手証券に対する一部業務停止命令とメガバンクグループに対する行政処分が同時に出されたのは極めて異例。

   三井住友FGは金融庁の尾を踏んでしまったようだ。

  • SMBC日興証券の株価操作事件、異例の厳罰処分に(写真はイメージ)
    SMBC日興証券の株価操作事件、異例の厳罰処分に(写真はイメージ)
  • SMBC日興証券の株価操作事件、異例の厳罰処分に(写真はイメージ)

大株主の保有株を転売して差益を得る「ブロックオファー」取引

   鈴木俊一金融担当相は10月7日、記者団に対し、「あってはならないことだ。国民の証券業界に対する信用失墜にもなる。断固、厳しい処分をさせていただく」と強調した。

   SMBC日興証券や金融庁の調査によると、事件は大株主の保有株を転売して差益を得る「ブロックオファー」取引で起きた。

   SMBC日興証券は売買価格の基準となる取引日に、株価が大幅に下落する事態を防ぐため、「株価を一定程度に維持しようと企て、相場を安定させる目的で(対象銘柄の)買い付けを行った」(金融庁の発表より)。これが、金融商品取引法違反に当たると認定された。

   三井住友FGは2009年に旧日興証券を買収、SMBC日興証券とした後、収益力アップに向け法人部門の強化に突き進んできた。

   ブロックオファーの担当部署は増員が繰り返され社内の発言力が高まる一方で、売買を管理・監督する部門のテコ入れは先送りされてきた。金融庁はこうした利益優先の姿勢が事件を未然に防げなかった要因になったとみている。

「もうちょっと踏み込んで管理ができなかったのか」

   ある金融庁幹部は親会社の責任は重いと断じたうえで「日興の抜本改革には三井住友FGの主体的な関与が不可欠だ」と指摘する。親会社に対してもあえて行政処分に踏み切ることで、三井住友FGの責任を明確にしたかたちだ。

金融庁が推し進めてきた「銀証連携」に水を差しかねない事態に

   金融庁が今回、異例ともいえる厳罰で臨んだ背景には、この間推し進めてきた「銀証連携」の流れに、事件が水を差しかねないとの危機感がある。

   金融庁は2021年に銀行と証券会社の情報共有に関する規制緩和を決めるなど、銀証連携に配慮してきた。

   しかし、SMBC日興証券をめぐる調査で、グループ会社の三井住友銀行とSMBC日興証券の間で、取引先企業に同意を得ることなく、株式の売り出しなどに関する非公開情報を共有していたことが判明した。

   これに関する金融庁のいら立ちは、10月7日に公表したニュースリリースを見ればわかる。

「SMBC日興証券役職員が銀証間で情報の授受を行ってはならないことを認識しながら、案件獲得という利益を優先した」「法令遵守意識が希薄であることに起因するものと認められる」

   ニュースリリースに並ぶ強い言葉を、ある証券業界関係者は「金融庁の怒りは相当のものだ」と解説する。

   金融庁はSMBC日興証券に対し、ブロックオファー取引を2023年1月6日まで3か月間、停止し、11月7日までに業務改善計画を提出するよう命じた。

   さらに「今回の処分を踏まえた経営責任の明確化」も迫っており、三井住友グループ内には「近藤雄一郎・日興社長の進退を含む厳しい社内処分を下さなければ、納得を得られないだろう」と重い空気が漂う。

   SMBC日興証券の元副社長執行役員ら当時の幹部6人が起訴されるという前代未聞の事態に発展した株価操作事件は、三井住友グループの土台を根底から揺るがしている。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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