金融庁が推し進めてきた「銀証連携」に水を差しかねない事態に
金融庁が今回、異例ともいえる厳罰で臨んだ背景には、この間推し進めてきた「銀証連携」の流れに、事件が水を差しかねないとの危機感がある。
金融庁は2021年に銀行と証券会社の情報共有に関する規制緩和を決めるなど、銀証連携に配慮してきた。
しかし、SMBC日興証券をめぐる調査で、グループ会社の三井住友銀行とSMBC日興証券の間で、取引先企業に同意を得ることなく、株式の売り出しなどに関する非公開情報を共有していたことが判明した。
これに関する金融庁のいら立ちは、10月7日に公表したニュースリリースを見ればわかる。
「SMBC日興証券役職員が銀証間で情報の授受を行ってはならないことを認識しながら、案件獲得という利益を優先した」「法令遵守意識が希薄であることに起因するものと認められる」
ニュースリリースに並ぶ強い言葉を、ある証券業界関係者は「金融庁の怒りは相当のものだ」と解説する。
金融庁はSMBC日興証券に対し、ブロックオファー取引を2023年1月6日まで3か月間、停止し、11月7日までに業務改善計画を提出するよう命じた。
さらに「今回の処分を踏まえた経営責任の明確化」も迫っており、三井住友グループ内には「近藤雄一郎・日興社長の進退を含む厳しい社内処分を下さなければ、納得を得られないだろう」と重い空気が漂う。
SMBC日興証券の元副社長執行役員ら当時の幹部6人が起訴されるという前代未聞の事態に発展した株価操作事件は、三井住友グループの土台を根底から揺るがしている。(ジャーナリスト 白井俊郎)