広まる「脱炭素経営」、現在のトレンドは将来見据えた戦略的「目標」設定...進めていますか?/NTTデータ・佐藤雅俊さんに聞く

提供:RX Japan

排出量の「可視化」はあくまで起点...大事なのは削減ヘの取り組み

kaisha_20221011202359.jpg

――情報収集と算定、いずれも大変な作業です。そこでNTTデータでは、こうしたデータをオンライン上(ソフトウェア上)に集約し、サプライチェーン排出量を可視化するプラットフォーム「C-Turtle(シータートル)」を展開しています。

佐藤さん「C-Turtleの強みは、スコープ3のうち、カテゴリー1(サプライヤーから購入した製品・サービス)とカテゴリー2(資本財)の算定において、一般的な算定方法とは異なる、『総排出量配分方式』を適用しているところです」

――「総排出量配分方式」とはどういったものでしょうか。

佐藤さん「込み入った話になりますが、順を追って説明すると、一般的な算定方法では、調達した原材料・製品の数・購入額(=活動量)に対し、活動量あたりのCO2排出量(=排出原単位)を掛け算し、算定するものです。この排出原単位は、環境省がデータベースとして出しているもので、業界平均値をとっています(図参照)。
実は、ここに問題があります。
というのは、排出原単位が業界平均値のまま固定されているため、たとえば取引先のサプライヤーがGHGの削減に取り組み成功したとしても、その削減効果が自社への間接排出量(=スコープ3のカテゴリー1、2)の算定結果に反映されないのです。
ようするに、数字上、サプライヤーや自社の企業努力の実績が表れないのです」
(図)C-Turtleが適用する「総排出量配分方式」について。なお、「総排出量配分方式」の適用は、国際NGO「CDP」(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の保有データをシステム内で活用することで可能となった
(図)C-Turtleが適用する「総排出量配分方式」について。なお、「総排出量配分方式」の適用は、国際NGO「CDP」(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の保有データをシステム内で活用することで可能となった
佐藤さん「これに対して、『総排出量配分方式』では、業界平均値は用いず、サプライヤーとの取引額を『活動量』、サプライヤーの売上高あたりの排出量の割合を『サプライヤー別排出原単位』として、それぞれを掛け算し、算定します(図参照)。こうすると、前述の問題点をクリアしますし、より実態に即した排出量の算定につながるのです」

――こうしたサービスを通じて、NTTデータでは脱炭素社会の実現に向け、どのようなビジョンを描いているのでしょうか。

佐藤さん「思い描いているのは、社会全体でのカーボンニュートラルの実現です。そのため、排出量の可視化は、あくまで起点です。最も大事なのは、社会が、それぞれの企業が、GHGの削減に取り組むことでしょう。もっとも、そのための前段階として、逆算して考えていくと、削減を目指す道しるべとなる『削減計画』が必要で、そのためには現状の実態に即した排出量の可視化が大切だと考えています」
kaisha_20221011202540.jpg
佐藤さん「C-Turtleを通じて、企業間データによってサプライチェーン全体だけでなく、業界を超え、究極的には社会全体までつながって排出量の可視化ができたら、理想ですね。すると、みんなで有効な施策を打てて、『脱炭素』の取り組みがもっと加速するのではないか。NTTデータのITやデジタルの力を駆使して、脱炭素社会の実現に近づけていけたらと思っています」

――そんな理想の社会の実現に向けて、企業が脱炭素脱炭素経営に取り組むうえで、さまざまな企業の脱炭素ソリューションが一堂に会する、RX Japan主催の展示会「【関西】脱炭素経営 EXPO」(インテックス大阪)はヒントとなりそうです。2022年11月16日~18日の期間中、NTTデータも出展します。

佐藤さん「秋展では私も現地にいきましたが、GHG排出量の算定に苦労されている企業さんからの相談を多数受け、関心の高まりを感じました。いまや排出量を可視化して終わりではなく、最終目標である削減の実行を視野に、何をすべきか考えている企業も少なくありません。一方では、まだ進んでいない企業が多いのも実情ですから、『【関西】脱炭素経営 EXPO』でヒントを得て、ぜひスタートをきってほしい。当日のブースでは、私たちの取り組みをアピールしていきたいと思います」
大盛況だった「脱炭素経営EXPO 秋展」
大盛況だった「脱炭素経営EXPO 秋展」

   ――最後に、脱炭素社会の実現に向けて、どんな思いがありますか。

佐藤さん「脱炭素への機運の高まりはもともと、18世紀の産業革命以降の人間の活動によって排出された温室効果ガスの総量と、世界の平均気温の上昇に相関があることがわかってきたことからです。このような負の連鎖を断ち切るためにも、脱炭素の取り組みは、社会の責任として、持続可能な発展に向けて、取り組まなければならないものです。いまこそ私たち現役世代は、何をすべきか考え、そして行動していかなければなりませんね」

――ありがとうございました。

●「C-Turtle」は日本国内における株式会社NTTデータの商標です。

kaisha_20221011202755.jpg

   企業の「脱炭素経営」のヒントとなるソリューションが一堂に会する、国内最大規模の脱炭素経営に特化した専門展「脱炭素経営EXPO」2022年「【関西】脱炭素経営 EXPO」が2022年11月16日~18日、インテックス大阪で開催する。脱炭素経営を目指す経営者、経営企画、ESG・サステナブル部門などの担当者が多数来場するなど、関係者注目の専門展をお見逃しなく。

【企業プロフィール】
NTTデータ

https://www.nttdata.com/jp/ja/

1988年設立。国内トップSIerとして、システムインテグレーションの業界をリードする。「カーボンニュートラル」の領域では、同社のデジタル技術を活用して、顧客の悩み・困りごとに応える「グリーンコンサルティング」サービスを展開、戦略立案から実行支援までをサポートする。同サービスの一環となる、GHG可視化プラットフォーム「C-Turtle(シータートル)」は2022年10月、本格運用がスタートした。また、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた気候変動対応ビジョン「NTT DATA Carbon-neutral Vision 2050」を掲げ、その実現に向けた取り組みにも注力する。


姉妹サイト