企業のネット炎上対策、どうしたら?...8パターンに分類、それぞれの対応解説

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   企業のネット炎上を防ぐためのマニュアル本はいくつかあるが、本書「炎上しても大丈夫 今日から使える企業のSNS危機管理マニュアル」(晶文社)ほど役立つものはないだろう。ネット炎上のパターンごとに対応を解説し、効果絶大の対策を教えてくれる。

「炎上しても大丈夫 今日から使える企業のSNS危機管理マニュアル」小木曽健著(晶文社)

   著者の小木曾健さんは、国際大学GLOCOM客員研究員。複数のITベンチャーを経て現職。企業向けの「ネット炎上研修」を数多く行ってきただけに、本書の内容は実践的だ。著書に「11歳からの正しく怖がるインターネット」「ネットで勝つ情報リテラシー」などがある。

   まず、冒頭で個人と企業のネット炎上の違いについて、次のように説明している。個人のネット炎上は、反社会的な言動・違法行為などに対するバッシングの集約であり、定義が明確である。

   一方、企業のネット炎上は、売上減、不買運動、顧客離れ、イメージダウン、取引先への迷惑など、ネットでの騒動が全て含まれるため、定義はあいまいだ。それゆえに予防措置をとるべき範囲も広範囲に及ぶ。

   ネット炎上は全体意見のごく一部であるケースが多い。しかし、ネットによって可視化されるため、それが多数派だと誤認されやすいという。

なぜ炎上したか、誰が何に対して怒っているのかを見極める

   次に、企業のネット炎上を以下の8パターンに分類している。それによって異なる対応が求められる。

1 残当型 「残念ながら当然」というスタンダードな炎上。
2 身内型 企業活動の失態ではなく、個々の社員の「やらかし」が原因のもの。
3 業務外型 業務とは無関係で社員がプライベートに起こしたことだが、対応せざるを得ないもの。
4 火に油型 謝罪によってさらに炎上させてしまったもの。
5 濡れ衣型 初期の段階ではっきり否定、反撃する必要があるもの。
6 非実在型 「発端となった炎上」が実在しなかったケース。
7 自爆型 非実在型の一種だが、本人が炎上させてしまったもの。
8 斜め上型 炎上ロジックが斜め上すぎるので、相手にする必要がないもの。

   炎上した際は、なぜ炎上したか、誰が何に対して怒っているのかを見極めることが重要だという。ズレた謝罪を行うと、再度炎上することもある。また、「言葉足らず」や「もし不快に思う人がいたら、お詫びしたい」など、謝罪に使ってはいけないNGワードがある、と注意している。こうした知識を持ち、いつ炎上しても対処できるよう備えておくことが肝要だ。

対応は謝罪か説明か?

   上記の8種類の炎上について、対応は大きく2つの分かれる、と解説している。

   1から4まで――つまり、残当型、身内型、業務外型、火に油型に対しては「謝罪」が必要だ。5から8まで――こちらは、濡れ衣型、非実在型、自爆型、斜め上型に対して取るべきアクションは「説明」だ。

   炎上対応はスピードとの闘いであり、一晩寝せたらアウトだという。そのために、組織に必要な「ネット炎上の報告ルール」をつくることを勧めている。ネット炎上に気付いた人が申告を「躊躇しない」仕組み、その申告が途中で「滞留しない」仕組みが必要だ。

   また、炎上投稿は「消すと増える」ので、消す前に報告するというルールを設定することも大切だ。

   謝罪の場合、やるべきことはシンプルで、まずは謝罪、次に謝罪の理由を投稿、最後に感謝の言葉を添える。

   説明の場合でも気を緩めたり、時間的な優先度を下げたりするのはNG。5~8のどのパターンかを精査する。事実関係に誤りはないか、報道に誤りはないか、ツイッター、掲示板で賛同されているか、ロジックが飛躍しすぎではないか、を検討して対応する。

   濡れ衣、誤解に対する際は、弁護士名を添えると効果的だそうだ。

筋の通った対応をすることが大切

   最後に、炎上「前日」までに、企業と社員が知っておくべきことをまとめている。

   投稿内容に問題があれば、限定公開であっても拡散、炎上すること。ひとたび炎上すれば、匿名アカウントでも個人が特定されうるという。したがって、「自宅玄関ドア」に貼れるものが、ネット・SNSに投稿できる限界、と指摘している。

   また、ペナルティ設定がない社内ルールは、単なるスローガンにしかすぎない。したがって、社内ルールがちゃんと機能するか、動作テスト(訓練)で確認することを勧めている。

   小木曽さんは、多様性のある社会を守るために、企業が筋の通った対応をすることが大切だ、としている。「炎上が理不尽な言いがかりなら、当たり屋に勝てるロジックで戦う、筋の通った反撃態勢を準備する」ことを期待している。

   非実在型の炎上にあった食品メーカーの例を挙げて、言いがかりに屈することがなかった姿勢を高く評価している。

   「企業は、その戦い方で社会的評価を獲得し、企業価値を高めることができる。そしてその姿には、他の企業を勇気づける力すらあるのです。素敵です」と結んでいる。

   企業のネット炎上を「野次馬」のように面白がるのではなく、何が問題なのかを見極めることがネットユーザーにも求められているのではないだろうか。

   気に入らないものが存在することを認める寛容さが、社会の多様性を確保するのだから。

(渡辺淳悦)

「炎上しても大丈夫 今日から使える企業のSNS危機管理マニュアル」
小木曽健著
晶文社
1540円(税込)

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